令和4年度の国際私法に関連する主な裁判例

(冒頭の + は渉外判例研究会で報告済み又は報告予定の裁判であること、あるいは上訴審判決が報告済み等の理由から報告対象とならない裁判であることを示す。)

 令和4年度重要判例解説(有斐閣)のために横溝大教授(名古屋大学)が収集中の国際私法関連の裁判例を、裁判年月日の新しいものが上になるように掲載した。各裁判例の紹介も横溝教授による。何年度の裁判例として掲載するかについては、上記重要判例解説と若干ずれる場合のあるので、前年度以前のリストもあわせて参考にされたい。

 

◎ 令和4年度重要判例解説掲載の裁判例

- 知財高判令和4・7・20(裁判所Web、平30(ネ)10077号)
米国内サーバからの日本所在のユーザに向けた配信が日本特許権侵害に該るかが問題となった事例。実質的且つ全体的に見て特許発明の実施行為が日本国内で行われたと評価し得るならば、日本の特許権の効力を及ぼしても属地主義には反しないと判示。
+ 東京地判令和4・3・23(平30(ワ)26750号、LEX/DB 25592517)(2022-09嶋)
Xらが、Y(北朝鮮)の勧誘・留置行為及び面接交流権侵害を理由に慰謝料等支払請求。勧誘行為につき管轄肯定(民訴法3条の3第8号)。留置行為及び面接交流権侵害については管轄否定。対外国民事裁判権法2条1号の「国」に未承認国は含まれず。
- 東京地判令和3・11・12(裁判所Web、令2(ワ)20014号)
X(日本法人)がY(米国法人)に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき情報開示請求。民訴法3条の3第5号により管轄肯定。発信者情報開示を請求する権利の準拠法につき、条理に基づき、侵害された権利との最密接関係地として日本法を適用。
+ 東京地判令和3・4・12(2021WLJPCA04128009、平31(ワ)9250号)(2022-05ダブロンベック、2023-05竹下)
X(カナダ国籍)が、妻Y1(三重国籍)及びその交際相手Y2(米国籍)に対し損害賠償請求。監護権の存否につきノバスコシア州法を、不法行為につき日本法を適用(通則法32条・17条)。権利侵害も権利自体の準拠法によるべきとのXの主張を採用せず。
+ 東京家審令和3・1・27(D1-Law28293207、令元(家)8698号)(2022-05加藤紫帆)
X1(重国籍)とX2(日本国籍)による子A(重国籍)についての養子縁組許可申立。養父子関係ではニュージーランド法と日本法を適用(通則法31条1項・38条1項)。ソーシャルワーカーの報告書を求めるニュージーランド法準則は手続規定として適用せず。
- 東京家審令和3・1・4(2021WLJPCA01046001、令2(家イ)8523号)
XがY(日本国籍)を相手方として嫡出否認申立。Yの住所が日本にあることから管轄肯定(家事法3条の13第1項1号、人訴法3条の2第1号)。日本法とフィリピン法の何れにおいても嫡出性が否認されるべきとして申立認容(通則法28条1項)。

○ その他の裁判例

- 東京地判令和4・11・15(LEX/DB25593737、令3(ワ)28328号・令4(ワ)13391号)
子Bに殺害されたA(帰化により日本国籍取得)の相続につき、Aの実母XとBが何れもAの単独相続人であると主張し、相続人たる地位の確認等を求めた事例。Bが相続人になれるかにつき、Aの本国法である日本法で判断(通則法36条)。
- 東京地判令和4・9・30(裁判所Web、令元(行ウ)461号、同(ワ)24633号)
米国で同性婚をした米国人男性と日本人男性が、在留資格変更申請不許可処分につき慰謝料等の支払等請求。日本人と同性婚をした外国人については平成25年通知の射程が及ばないとする取扱いは、憲法14条の趣旨に反すると判示。
- 静岡地浜松支審令和4・7・22(2022WLJPCA07226002、令4(家イ)259号)
X(ブラジル国籍)がYに対し嫡出否認申立。Yの住所が日本にあることから管轄肯定。通則法28条1項につき、夫婦が子の出生前に離婚した場合、婚姻解消当時の本国法によるとし、ブラジル法からの反致(同41条)も認め、日本法を適用。
- 東京家判令和4・7・7(D1-Law 28302552、令元(家ホ)777号)
妻X(日本国籍)が夫Y(E国籍)に対し、離婚、親権者指定、養育費支払、離婚慰謝料等支払、財産分与並びに年金分割を求めた事例。Yの住所から管轄肯定(人訴法3条の2第1号)。全ての請求につき日本法適用(通則法27条・32条、扶養義務2条)。
- 大阪地判令和4・6・24(D1-Law 28302531、令2(ワ)2931号)
X(日本法人)がY1(中国法人)及びY2(日本法人)に対し、X商品の中国における展示・販売に関し、債務不履行等に基づき損害賠償等請求。主観的併合(民訴法3条の6、38条前段)。準拠法につき、推定を覆し日本法適用(通則法8条1項・2項)。
- 最決令和4・6・21(裁判所Web、令3(許)8号)
Xが夫Yに対し、実施法134条に基づき、子らのフランスへの返還を命ずる終局決定を債務名義として、間接強制による強制執行の申立をした事例。本件申立後、代替執行により子の返還が完了したことにより本件申立は不適法になったとして、抗告棄却。
- 横浜家判令和4・5・31(D1-Law 28301564、令3(家ホ)308号)
妻X(中国国籍)が夫Y(日本国籍)に対し離婚等請求。管轄肯定(人訴法3条の2第1号・3条の3・3条の4第1項)。準拠法は日本法(通則法25条・27条・32条・扶養法2条1項本文)。年金分割は、日本の社会保障制度に関するとして日本法適用。
- 東京高判令和4・4・28(令3(ネ)3718号・令3(ネ)5165号・令3(ネ)5166号、LEX/DB25593471)
東京地判令和3・6・30の控訴審判決。準拠法については原判決踏襲。
- 東京地判令和4・4・28(LEX/DB25605198、平30(ワ)31978号)
日本所在の土地に関する借地権の相続が問題となった事例。相続・遺言につき韓国法適用(通則法36条・37条)。遺言の方式は日本法により有効(遺言の方式の準拠法に関する法律2条3号)。借地権の得喪については日本法(通則法13条2項)。
- 東京地判令和4・4・25(LLI/DBL07731259、令2(ワ)4737号)
クレジットカード決済代行サービス等を行うX(日本法人)が、決済サービスの提供等を行うY(シンガポール法人)に対し、加盟店開拓等及び売上清算処理業務等に関する契約上の債務不履行に基づき損害賠償請求。シンガポール法を適用し請求棄却。
+ 東京地判令和4・4・22(裁判所Web、平31(ワ)8969号)(2023-03種村)
X(中国法人)がY(香港法人)に対し、オンラインゲームの制作と日本国内への配信等による著作権侵害を主張し、差止等請求。事案の性質、被告の応訴負担、証拠の所在地、中国訴訟の存在等を考慮しても、「特別の事情」なし(民訴法3条の9)。
- 東京地判令和4・4・21(LEX/DB25605207、令2(ワ)6768号)
Y(フィリピン法人)による新株発行引受の募集に応じたX(日本法人)が、株式割当がなされなかったことから預託金返還請求。請求がYの日本における業務に関する等とし管轄肯定(民訴法3条の3第4号・第5号)。日本法適用(通則法8条1項・2項)。
+ 東京地判令和4・4・20(LLI/DBL07731305、令2(ワ)5731号)(2023-03嶋)
Xが、Y1に対し貸金等の返還を、Y1の代表取締役Y2に対し任務懈怠を理由に損害金等を請求。管轄肯定(民訴法3条の5第1項等)。貸金返還請求権については最密接関係地法、Y2に対する請求については内部関係であり設立準拠法として、日本法を適用。
+ 東京地判令和4・3・25(LEX/DB25604902、平30(ワ)27813号)(2023-02岩本)
X(日本法人)がYらに対し、連帯して、Y1(Y2の執行役会長)に対しては貸金契約、Y2(英国法人)に対しては連帯保証契約に基づく保証債務等に基づき、金員の支払を求めた事例。Y2が本案について主張していたことから応訴管轄を肯定(民訴法12条)。
- 東京地判令和4・3・25(LEX/DB25604259、令3(ワ)33211号)
亡A(韓国籍)に金銭を貸し付けたBから債権譲渡を受けたXが、A相続財産を被告として金員の一部の支払を求めた事例。Aの相続につき韓国法を適用し、請求認容(通則法36条)。
- 東京地判令和4・3・24(裁判所Web、令元(ワ)25152号)
X(日本法人)が、Yら(ネバダ州法人及び日本法人)に対し、特許権侵害に基づく差止等及び損害賠償請求。属地主義の原則から、特許法2条3項1号の「生産」に該当するには、特許発明の構成要件を満たす物が全て国内で作られる必要があると判示。
- 東京地判令和4・3・18(LEX/DB25604921、令2(ワ)30760号)
マレーシア法人Aの元従業員XがAに解雇されたことにつき、Aの親会社Y(日本法人)に対し、信義則上の義務違反を主張し損害賠償等支払請求。信義則上の義務の準拠法につき、当事者に争いがないとし日本法を適用(通則法8条2項又は9条)。
- 東京地判令和4・3・11(LEX/DB25604629、平30(ワ)39035号)
X(シンガポール法人)がY1(日本法人)及びその代表取締役Y2(日本居住)に対し、欺罔行為の共謀等を理由に損害賠償等請求。関係者間の交渉等が日本語で行われたこと、客観的証拠が書証に留まることから、特別の事情の存在を否定(民訴法3条の9)。
- 名古屋地判令和4・3・7(2022WLJPCA03078008、令元(ワ)3751号)
XがYに対し、ハワイ州所在のゴルフクラブにおいて生じた、Yが運転するランドカーによるXへの衝突事故につき、損害賠償等の支払を求めた事例。「本件における準拠法が日本法となることについては、当事者間に争いがない。」と判示。
- 東京地判令和4・3・2(LLI/DBL07730759、令3(ワ)19999号)
Xが、SNS上の投稿による名誉毀損を主張し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、管理運営者Y(デラウェア州法人)に対し発信者情報開示請求。Yが日本の利用者に対し日本語でサービスを提供等していることから管轄肯定(民訴法3条の3第5号)。
- 広島高決令和4・2・25(D1-Law 28301763、令4(ラ)3号)
遺産分割申立認容審判である広島家審令和3・12・17に対する即時抗告事件。管轄及び準拠法について原審判踏襲。
- 東京地判令和4・2・24(LEX/DB25604598、令3(ワ)10506号)
XがY(何れも日本法人)に対し、賃借している建物の賃料の減額につき確認請求。紛争につきICCの仲裁規則に従って東京で仲裁が行われることを定めた仲裁条項を含む契約を締結することにより当事者間に仲裁合意が成立していたとして、訴え却下。
- 東京地判令和4・2・22(LLI/DBL07730611、令2(ワ)2859号〕
B(加州法人)から勧誘を受け不動産ローンに出資したXが、出資法違反を理由にBの代表者Yに対し損害賠償等請求。構成要件該当行為の一部が日本で行われたことから出資法1条違反。損害がX住所地で発生したとし準拠法を日本法と判示(通則法17条)。
- 知財高判令和4・2・21(裁判所Web、令2(ネ)10005号)
漫画の著作権者XがY(カリフォルニア州法人)に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき発信者情報の開示を求めた東京地判令和2・1・22の控訴審判決。国際裁判管轄については、民訴法3条の3第5号により管轄を肯定した原判決を踏襲。
- 東京地判令和4・2・18(LLI/DBL07730624、令2(ワ)1111号)
Xが、賃貸契約終了を理由に、Yらに対し日本所在の建物の明渡し及び賃料相当損害金の支払を請求。Y1(中国国籍)に関し、住所が日本にあるとして管轄を肯定し(民訴法3条の2第1項)、何れの請求についても日本法を適用(通則法13条1項、17条)。
- 東京地判令和4・2・16(LEX/DB25603765、令2(ワ)18391号)
イタリアの銀行であるXが、元従業員Y(中国国籍)に対し、X上海支店の預金をYが管理・支配する銀行口座に不正送金したとし損害賠償請求。Yが日本に不動産を有していることから管轄肯定(民訴法3条の3第3号)。準拠法は中国法(通則法17条)。
- 東京地判令和4・2・16(LEX/DB25603946、令元(ワ)21780号)
Xが、父A(韓国籍)との間で、B社につき株式譲渡契約を締結したところ、株券が未発行のうちにP6が死亡したため、Yらに対し、上記株式がYらとの準共有の状態にあることの確認等を求めた事例。Aの相続につき韓国法を適用(通則法36条)。
- 東京家審令和4・1・19(D1-Law28302533、令3(家イ)7014号)
X(フィリピン国籍)からY(日本人)に対し認知調停申立。管轄肯定(家事法3条の13第1項、3項、人訴法3条の2第1号)。Xの母の前夫(フィリピン国籍)との嫡出親子関係はフィリピン法で、認知については日本法で判断(通則法28条1項、29条1項)。
- 東京地判令和4・1・11(2022WLJPCA01116002、令元(行ウ)643号・令元(行ウ)650号・令元(行ウ)651号)
第二次世界大戦前、台湾で日本国籍を有していた台湾出身の両親間に出生し日本国籍を取得したXらが、日本国籍確認請求。Xらは、日華平和条約の発効日において何れも日本国籍を喪失したとして請求棄却。
- 東京地判令和3・12・24(2021WLJPCA12248012、平30(ワ)37102号)
X(中国法人)がY(日本法人)に対し、委託契約解除を理由に不当利得返還請求。準拠法につき、X・Yは、準拠法の選択をしていないが最密接関係地が日本としている、また、請求の原因となった委託契約は「日本において発生した」との認定。
- 東京高判令和3・12・22(労判1261号37頁)
外資系航空会社Aに解雇されたXらが、Aを承継したYに対し地位確認・賃金支払(甲事件)及び損害賠償(乙事件)等請求。債務履行地(甲事件)及び不法行為地(乙事件)として管轄肯定(民訴法3条の3第1号、8号)。準拠法は何れも日本法(通則法12条、7条、8条)。
- 東京地判令和3・12・22(2021WLJPCA12228013、令3(ワ)7180号)
X(日本法人)がY(カリフォルニア州法人)に対し、商法512条に基づき、人材紹介の報酬等の支払を求めた事例。本契約に基づき生じる一切の訴訟の管轄地をカリフォルニア州裁判所とする管轄合意条項の範囲に本件訴えも含まれるとして訴え却下。
- 東京地判令和3・12・21(LEX/DB25602506、平30(ワ)23349号)
X(日本法人)が、Y(ネバダ州法人)等との間で風力発電実施契約を締結したと主張し、不法行為等に基づき損害賠償等請求。不法行為請求につき客観的事実関係が明らかとし、他の請求は併合して管轄肯定(民訴法3条3第8号、3条の6本文)。
- 広島家審令和3・12・17(D1-Law 28301762、令3(家)893号)
遺産分割申立事件。「Xの国籍はCであるが、被相続人の最後の住所地は日本国内にあるから、国際裁判管轄は日本にある。また、被相続人の国籍は日本であるから、準拠法は日本法となる」と判示。即時抗告され広島高決令和4・2・25。
- 横浜家川崎支審令和3・12・17(2021WLJPCA12176002、令3(家)622号)
X(中国国籍)がY(元中国国籍・日本に帰化)に対し、未成年者Aの養育費の支払を求めた事例。子の住所が日本国内にあることを理由に管轄肯定。養育費の準拠法は、Aの常居所地法としての日本法(扶養義務の準拠法に関する法律2条1項)。
- 知財高判令和3・12・15(LEX/DB25572135、令2(行ケ)10100号)
不動産の賃貸等を営むX(日本法人)が、ニュージャージー州法人Yに対し、特許庁の審決の中商標登録取消部分の取消を請求。Xの取締役AとYとの合弁契約にあった、準拠法をニュージャージー州法とする準拠法条項に従い契約を解釈(通則法7条)。
- 東京地判令和3・12・10(LEX/DB25602529、令和2(ワ)6864号)
X(恐らく韓国籍)が、Yの運行する路線バスに衝突された事故につき、Yに対し損害賠償等請求。国内で発生した事故での国内で発生した人身損害の賠償請求であることから、管轄肯定(民訴法3条の3第8号)。準拠法は日本法(通則法17条)。
+ 東京地判令和3・11・22労判1258号5頁(平31(ワ)3270号)(2022-07種村)
Y(国)との労働契約に基づき、日米安保条約に基づき厚木航空施設で勤務していたXが、パワハラ等で退職を余儀なくされた等と主張し、Yに対し慰謝料等請求。従業員から労務提供を受ける行為は、合衆国軍隊の公的活動そのものであり、民事裁判権が免除されると判示。
- 東京地判令和3・11・10(LEX/DB25603477、令元(ワ)21327号)
Xが、元妻Y1とY2(全員ベトナム国籍)に対し、Y1とY2の不貞行為やY2のFB上の投稿等が不法行為・名誉毀損に当たると主張し、損害賠償等請求。不貞行為開始時期における婚姻破綻の有無や名誉毀損も含め、準拠法は通則法17条により日本法。
- 東京家立川支審令和3・10・29(D1-Law 28300518、令2(家)1879号)
夫X(米国及びギリシャ国籍)が妻Y(日本国籍)に対し、未成年者A(日米及びギリシャ国籍)につき監護者指定申立。子の住所が日本にあることから管轄肯定(家事法3条の8)。監護権者指定の準拠法は日本法(通則法38条1項但書、32条)。
- 東京地判令和3・10・15(2021WLJPCA10158011、令2(ワ)21923号)
交通事故によってA(フィリピン国籍)が死亡し損害を被ったとして、同人の子XらがYに対して損害賠償等請求。Aの損害賠償権の相続につき、同人の本国法であるフィリピン法により判断し(通則法36条)、これを否定。
- 東京地判令和3・10・11(LEX/DB25602577、令2(ワ)3194号)
亡Aの子であるXが、Aの遺言に基づく遺贈により各不動産についてのXの遺留分が侵害されたとして、遺留分減殺請求。Aの本国法である韓国法により判断(通則法36条・37条)。
- 東京地判令和3・10・7(2021WLJPCA10078008、令3(行ウ)89号)
X(バングラデシュ国籍)が、帰化の許可申請を退けた処分行政庁の決定の取消等を求めた事例。国籍法5条1項及び7条においては、法務大臣は帰化の許可につき裁量権を有するとした上で、同決定が裁量権を逸脱・濫用したとは認められないと判示。
- 東京地判令和3・10・6(2021WLJPCA10068002、令元(ワ)27165号)
ドイツ判決の承認執行が求められた事例。被告が出頭しなかったことから擬制自白を認め、民訴法118条各号に掲げられる全ての要件を具備するとして請求認容。尚、ハーグ送達条約に基づきなされた送達の有効性を念のため確認している。
- 東京地判令和3・9・14(2021WLJPCA09148011、令3(ワ)11709号)
日本居住のXらが外国Yに対し、YがCOVID-19につき情報を提供しなかったため感染症が国内に拡大し、経済的損害等を被ったと主張し、損害賠償請求。対象行為は日本国外での加害行為であり対外国民事裁判権法10条に該当しないとし、訴え却下。
- 東京地判令和3・9・7(2021WLJPCA09078014、平30(ワ)37041号・令2(ワ)30035号)
X(日本国籍)が、建物を実母Y(韓国籍)に無償で使用させる旨の使用貸借契約の終了を理由に建物の明渡等を請求。Yの夫Bの相続につき韓国法適用(通則法36条)。使用貸借契約の準拠法は日本法(同法8条1項・3項)。
- 東京地判令和3・8・26(LEX/DB25600938、平30(ワ)20851号)
亡P3(韓国籍)の妻であったXが、亡P3の子Yに対し、遺留分返還請求。亡P3の本国法である韓国法により判断(通則法36条)。
- 東京地判令和3・8・25(2021WLJPCA08258004、平31(ワ)10765号)
XがYに対し、フラダンスの衣装に関する各売買契約に基づき未払売買代金等の支払を求めた事例。X・Yの取引においては日本法を準拠法とする合意がされたとの認定がある。
- 東京高決令和3・8・23(D1-Law28292692、令3(ラ)592号)
夫X(米国・ギリシャ国籍)が、妻Y(日本国籍)に対し、長女A(日米及びギリシャ国籍)と面会交流する時期、方法等について定めることを求めた東京家立川支審令和3・2・8の抗告審決定。日本法を適用した原決定維持。
- 東京地判令和3・6・30(LEX/DB25601264、平28(ワ)44170号・平30(ワ)10123号・平30(ワ)18742号・平30(ワ)28646号)
被相続人Aの預金を相続人の一人が、Aの生前中に払い戻していたことが相続人間で問題となった事例。相続人の相続分につき、Aの本国法である韓国法に従って判断(通則法36条)。
- 東京家審令和3・5・31(2021WLJPCA05316013、令3(家)1564・1565・1566・1567・1568号)
X(日本国籍)が、夫Y(F国籍)に対し、未成年者Cら(何れも日本国籍)につき監護者指定及び引渡申立。申立時のCらの住所から管轄肯定(家事法3条の15、3条の8)。CらとXとの同一本国法である日本法を適用(通則法32条)。
- 大阪高決令和3・5・26(判タ1502号82頁)
大阪家決令和3・1・6の抗告審決定。子の常居所地の認定は、地域社会との繋がり、滞在期間、親の意思等を総合的に判断し、子が滞在地の社会的環境に適応順化していたかを検討するのが相当とし、子が豪州に常居所を有していたとは認められないとして申立却下。
- 大阪高決令和3・4・14(D1-Law 28300149、令3(ラ)259号)
大阪家決令和3・2・1の抗告審決定。子らの監護についてはフランスでの本案判決の判断が尊重されるべきところ、子らのフランスへの返還の強制が本案判決に反することが明らかであり、間接強制の申立は権利濫用であるとして、申立却下。
- 水戸家審令和3・4・8(2021WLJPCA04086004、令2(家)201号)
路上において保護されたXが就籍許可申立。事実関係を総合考慮し、Xは日本で生まれたと推認するのが相当であり、Xの実父母を特定することが出来ないから、Xは日本国民であると認めるのが相当であると判示(昭和27年改正前国籍法2条4号)。
- 横浜家判令和3・3・30(D1-Law28302545、令2(家ホ)181号)
子の引渡を命ずるシンガポール決定の執行が求められた事例。直接管轄が認められない場合であっても間接管轄が認められる場合もあるとし、具体的事情から間接管轄肯定(民訴法118条1号)。オンラインによる期日も手続的公序違反とならず(3号)。
- 大阪家決令和3・2・1(D1-Law 28300148、令2(家ロ)40015号)
最決令和4・6・21の第一審決定。終局決定に際しては外国裁判の日本で効力を有する可能性のみを理由として申立を却下してはならず、強制執行については、子が16歳に達した場合以外の制限規定はないとして、申立認容(実施法28条3項・135条)。
- 東京家審令和3・1・29(家判39号72頁)
妻X(中国籍)が夫Y(日本国籍)に対し、婚姻費用の分担を求めた事例。X・Yの何れの住所も日本にあることから管轄肯定(家事法3条の10)。準拠法は、扶養権利者であるXの常居所地法である日本法(扶養義務の準拠法に関する法律2条1項)。
- 大阪家決令和3・1・6(判タ1502号89頁)
子の父Xが母Yに対し、子のオーストラリアへの返還を認めた事例。子が乳児の場合には、定住に向けた両親の意図を踏まえて常居所を判断するのが相当とし、留置開始の直前に子が常居所を有していた国はオーストラリアであり、返還拒否事由もないとして、返還命令。
- 名古屋高判令和2・12・24(判タ1502号64頁)
岐阜地判令和2・6・19の控訴審判決。特別の事情の一つとして「準拠法の如何を考慮すること自体が許されないと解すべき十分な根拠は見当たらない」として、原判決踏襲。
- 大阪高決令和2・12・8(家判40号85頁)
大阪家決令和2・9・11の抗告審決定。実施法28条1項5号につき、「子の異議の内容、性質及び強度等とともに、…背景事情等も検討した上、子が、常居所地国に返還されることについて、様々な要素を考慮して異議を述べたものか否かを判断」すべきとし、原決定維持。
- 大阪家決令和2・9・11(家判40号90頁)
子らの母X(日本国籍)が父Y(日本国籍)に対し、子らのフランスへの返還を求めた事例。実施法28条1項5号につき、「子が自らの意思により中長期的な視点に立ち強固に返還を拒んでいると認められて初めて返還拒否事由に該当する」と述べ、返還決定。抗告審が大阪高決令和2・12・8
- 東京地判令和2・9・4(LEX/DB25586308、平26(ワ)11958号)
建築作業に従事した際にアスベスト粉じんに曝露した被災者又はその相続人等であるXらが、Yら(国と企業)に対し、損害賠償等の支払を求めた事例。被災者q164(韓国籍)の相続につき、韓国法を適用(通則法36条)。
- 東京家決令和2・7・3(家判36号94頁)
子C・Dの母Xが父Y(何れも米国籍)に対し、Cらの米国への返還を求めた事例。居住年数・目的・状況等から、Cらは日本で社会・家庭環境における実質的結び付きを保持・発展させながら相当長期間に亘り居住して来たと言えるから、常居所地国は日本だったとして申立却下。東京高決令和2・9・3の原決定
- 岐阜地判令和2・6・19(判タ1502号64頁)
日本法人Xらがフィリピンの銀行Yに金銭を預託していたところ、AがXらに無断で預託金の払戻を受けたことから、XらがYに対し不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償請求。財産管轄を認めたものの(民訴法3条の3第3号)、特別の事情により訴え却下(同法3条の9)。
- 東京高決令和2・5・15(家判36号105頁)
東京家決令和元・11・29の抗告審決定。フィリピン定住に向けたXYの意図の他、Cのフィリピンへの順応の程度等をも総合すると、XYのフィリピン定住の意向も、Cのフィリピンへの十分な順応も認められないとし、フィリピンはCの常居所地ではないとして原決定取消。
- 東京家決令和元・11・29(家判36号115頁)
子Cの父X(日本国籍)が、Cの母Y(日本国籍)を相手方とし、Cのフィリピンへの返還申立。XYが相当長期間継続してフィリピン定住の意図の下でCと共に生活していたことから、Cの常居所地をフィリピンとし、返還による重大な危険もないとして、申立認容。