令和3年度の国際私法に関連する主な裁判例

(冒頭の + は渉外判例研究会で報告済み又は報告予定の裁判であること、あるいは上訴審判決が報告済み等の理由から報告対象とならない裁判であることを示す。)

 令和3年度重要判例解説(有斐閣)のために横溝大教授(名古屋大学)が収集中の国際私法関連の裁判例を、裁判年月日の新しいものが上になるように掲載した。各裁判例の紹介も横溝教授による。何年度の裁判例として掲載するかについては、上記重要判例解説と若干ずれる場合のあるので、前年度以前のリストもあわせて参考にされたい。

 

◎ 令和3年度重要判例解説掲載の裁判例

+最判令和3・5・25(裁判所Web、令2(受)170号、同年(オ)135号)(2021-10渡辺)
カリフォルニア州判決の我が国での執行が求められた事例。懲罰的損害賠償を含む外国判決につき、当該外国の強制執行手続により弁済がなされたとしても、懲罰的損害賠償部分に係る債権に充当されたものとすることは出来ないと判示。
+東京地判令和3・3・9(2021WLJPCA03098001、平29(ワ)39524号)(2021-09横溝)
加州裁判所判決につき執行判決が求められた事例。本件外国判決の内容については、実際の了知もその機会の実質的提供もなかったことから、機会が与えられずに不服申立期間が満了しており、公序に反するとして請求棄却(民訴法118条3項)。
-知財高判令和3・9・29(2021WLJPCA09299001、令3(ネ)10028号)
職務著作の準拠法が問題となった東京地判令和3・2・18(裁判所Web、平30(ワ)28994号)の控訴審判決。判旨のうち準拠法に関する部分は原判決を引用。
-東京地判令和3・1・21(裁判所Web、平30(行ウ)93号外)
自己の志望により外国国籍を取得した者の日本国籍の喪失に関する国籍法11条1項の合憲性が問題となった事例。同規定は、重国籍の発生を出来る限り防止しつつ国籍変更の自由を保障したものであり、立法目的・手段共に合理的だとして、請求棄却。
-東京地判令和2・11・20(2020WLJPCA11208009、平30(ワ)30145号)
Xらが(何れも台湾出身)税理士Yに対し、Y受領の賃料の支払等を請求。不当利得準拠法は日本法(通則法14条)。XらがYに対し、賃料につきどのような権利主張が出来るかは日本法(同法13条)、前提となる本物件の共有関係は台湾法(同法36条)。
- 東京地判令和2・2・12(2020WLJPCA02128018、平30(ワ)32649号)
Xが上海日本人学校のPTA会長Y1及び国に対し損害賠償等請求。併合により管轄肯定(民訴3条の6)。日本国外での公務員の公権力行使に関する請求は公法的領域に属すとし国賠法1条1項を直接適用。他の請求にも日本法適用(通則法16条・21条)。

○ その他の裁判例

- 知財高判令和3・9・30(裁判所Web、令3(ネ)10026号)
大阪地判令和3・1・21の控訴審判決。国際裁判管轄及び準拠法につき、基本的には原判決踏襲。
- 東京地判令和3・7・20(2021WLJPCA07208018、令元(ワ)19622号)
X(オーストラリア国籍)が、配偶者Y1(米国籍)及びY2(シンガポール国籍)に対し、Yらの不貞行為により精神的苦痛を被ったとして損害賠償請求。Yらの不貞行為が日本で行われ、当時Xが日本に居住していたことから、日本法を適用(通則法17条)。
- 東京地判令和3・7・20(2021WLJPCA07208005、令元(ワ)35657号)
X(香港法人)がY(日本法人)に対し、衣類に関する売買契約に基づき代金等の支払請求。Yの主たる事務所が日本にあることから管轄肯定(民訴法3条の2第3項)。黙示の合意(通則法7条)又は事後的変更(同法9条)により、日本法が適用されると判示。
- 東京地判令和3・6・25(2021WLJPCA06258022、令元(ワ)19643号)
Yらとの間でYら家族がタイの居住権取得及び居住準備の支援等の業務委託契約を締結したX(香港法人)が、Yらに対し未払報酬等の支払を求めた事例。契約中、日本法を準拠法とし、東京地裁を専属的合意管轄裁判所とする条項があるとの言及有。
- 東京地判令和3・6・25(2021WLJPCA06258020、平31(ワ)825号)
XがYに対し(何れもバングラディシュ国籍)、バングラディシュから日本へ渡航するに際し虚偽の説明を行いXから金員を詐取したと主張して、不法行為に基づく損害賠償等請求。不法行為の準拠法を日本法とすることに両者が同意したとの認定。
- 大阪地判令和3・6・10(裁判所Web、平30(ワ)5037号・令2(ワ)10857号)
XがYに対し(何れも日本法人)、YによるXの顧客Aに対する米国訴訟の追行が不法行為等だとし損害賠償等請求。米国訴訟地を結果発生地としつつも(通則法17条)、X・Yの主たる事業所等から日本法を準拠法と判示(同20条)。
- 東京地判令和3・6・4(2021WLJPCA06048009、令元(ワ)16070号)
X(中国籍)が、Y(中国籍)がXの元配偶者A(中国籍)と不貞行為に及んだことから、婚姻関係が破綻し離婚に至ったとして、Yに対し慰謝料等請求。Yが日本で不貞を行い、Xも日本に居住していたことから、日本法を適用(通則法17条)。
- 東京家審令和3・5・14(2021WLJPCA05146006、令2(家)8076号)
未成年者Aを認知した父X(日本国籍)が、母Y(中国国籍)に対し、Aの親権者をXと定めることを求めた事例。Aの住所が日本国内にあることから管轄肯定(家事事件手続法3条の8)。親権者指定につき日本法を適用(通則法32条)。
- 東京高判令和3・4・28(判時2496号9頁)
東京地判令和2・2・14の控訴審判決。アンブレラ保険契約の準拠法・再保険契約の準拠法が日本法である点も含め、基本的に原判決支持。
+ 東京地判令和3・4・21(判時2521号87頁、裁判所Web、LEX/DB 25569269)(2023-05 村上)
NY州で婚姻を挙行したXら(NY州在住の日本人)が、婚姻後の氏につき双方を選んだ届出が不受理とされたことから、国に対し戸籍の記載に関する地位の確認等請求。方式につきNY州法、実質的成立要件につき日本法により、婚姻の有効な成立を確認(通則法24条1項2項)。
+ 東京地判令和3・4・15(2021WLJPCA04158005、令元(ワ)13402号)(2022-07小川)
傭船契約中のシンガポールでの仲裁を指定する仲裁合意が問題となった事例。傭船契約の準拠法及び当該条項の文言から、仲裁合意の準拠法は英国法(通則法7条)。英国法上、Xの請求に係る紛争もYも仲裁合意の範囲に含まれるとして訴え却下。
-東京家判令和3・3・29(D1-Law28293206、平30(家ホ)239号)
X(二重国籍)がY(二重国籍)に対し離婚等請求。離婚・養育費につき日本法適用(通則法27条但書、扶養義務準拠法2条1項)。親子関係につき、Xの本国法を日本法、Y・子A(三重国籍)の本国法をチェコ法とし、チェコ法適用(通則法38条1項・32条)。
-東京地判令和3・3・26(LEX/DB25589095、令3(レ)100号)
Xが、モロッコ帰国のための費用や手続についてY(モロッコ大使館)に対して行った照会に、Yが応じなかったことで精神的苦痛を被ったと主張し、Yに対し慰謝料等支払請求。Yが機関であり当事者能力を欠くとして(準拠法について言及無)訴え却下。
-東京地判令和3・3・26(D1-Law29064215、令3年(ワ)1786号)
XがYらに対し、準消費貸借契約に基づく貸金返還請求権及び利息契約に基づく利息金支払請求権として、貸金残金等の連帯支払を求めた事例。弁論の全趣旨から、本件の準拠法を日本法とする旨の合意が当事者間に認められると判示。
-東京地判令和3・3・24(2021WLJPCA03248005、令元(ワ)34236号)
妻Xが夫Y(何れもモンゴル国籍・日本居住)から暴行を受けた等と主張し、Yに対し不法行為に基づき損害賠償等請求。不法行為と性質決定した上で、X主張の不法行為の当時、XYが何れも日本に居住していたことから日本法を適用(通則法20条)。
+東京地判令和3・3・24(平成28年(ワ)41684号)(LEX/DB25588885,2021WLJPCA03248017)(2022-02岩本)
X(マン島法人)がY(日本人Aの管財人)に対しXA間の香港判決につき執行判決請求。本件契約等が実質的にカジノでの遊興を目的としていても公序に反するとは言えず、又、具体的経緯に鑑みればAには了知の機会が実質的に与えられていたと判示。
-東京地判令和3・3・12(2021WLJPCA03128025、令元(ワ)17640号)
Xが、ウェブサイト上でプライバシーを侵害された等として、サイト運営者Y(デラウェア州法人)に対し発信者情報開示請求。Yが日本にもサービスを提供していることから管轄肯定(民訴法3条の3第5号)。プロバイダ責任制限法4条1項を直接適用。
-東京地判令和3・3・10(2021WLJPCA03108019、平29(ワ)30986号)
X(英国法人)が、Y2(日本法人)に対しては請負契約の解除に基づく原状回復請求、Y2の取締役Y1に対しては損害賠償請求。請負契約につき準拠法条項に従い日本法適用(通則法7条)。Y1の責任については、プロセスを示さず会社法429条1項を適用。
-東京地判令和3・3・2(2021WLJPCA03028003、令元(ワ)12191号・令2(ワ)1146号)
XがYに対し、X保有の韓国の金融機関の預金等の一部を、Yが無断で自らの口座に入金させていたとし、不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還等の支払を求めた事例。韓国法・判決に言及するも、準拠法に関する判断なし。
-東京地判令和3・3・2(2021WLJPCA03028009、平30(ワ)31979号)
Xが、亡A(韓国籍)が時効取得した土地・建物の所有権を相続したとして、共有持分の登記名義を有するYらに対し移転登記手続履行請求。相続につき韓国法を適用(通則法36条)。取得時効の準拠法を日本法とすることにつき当事者間の合意を認定。
-東京地判令和3・2・18(裁判所Web、平30(ワ)28994号)
ゲームに係る著作権侵害が争われた事例。職務著作の準拠法は、雇用契約の準拠法国の関連規定によるとし、中国著作権法を適用。著作権の譲渡契約につき中国法・香港法を(通則法8条1項・2項)、その変動については保護国法として日本法を適用。
-東京地判令和3・2・18(裁判所Web、平28(行ウ)504号)
日露国籍の夫婦の子として日本で出生し、旧露国籍法15条2項前段に基づき露国籍を取得したXからの、日本国籍確認請求。当該露国籍の取得は自己の志望による外国国籍の取得に該るとし(国籍法11条1項)、同規定は合憲であるとして、請求棄却。
+東京地判令和3・2・17(裁判所Web、平31(ワ)7514号)(2022-03楢﨑)
Xが民法819条2項の違憲を主張し、国賠法に基づき慰謝料等支払請求。共同親権制を採る外国で離婚した父母が戸籍上で共同親権者と記載されるのは、外国判決承認の結果に過ぎず、本件規定自体に離婚地による形式的不平等が存在する訳ではないと言及。
-東京家立川支審令和3・2・8(D1-Law28291783、令元(家)1745号)
夫X(米国籍及びギリシャ国籍)が妻Y(日本国籍)に対し、子A(日米二重国籍及びギリシャ国籍)との面会交流について申立。Aの住所が日本にあることから管轄肯定(家事法3条の8)。面会交流の準拠法は日本法(通則法32条、38条1項但書)。抗告審は東京高決令和3・8・23。
-最決令和3・2・1(裁時1761号4頁)
刑訴法99条2項、218条2項の文言や立法経緯、サイバー犯罪条約32条の規定内容等に照らすと、電磁的記録を保管した記録媒体が同条約の締約国に所在し、正当な権限者の合法的且つ任意の同意がある場合、同記録媒体へのリモートアクセス及び同記録の複写は許されると判示。
-静岡地浜松支判令和3・1・26(2021WLJPCA01266002、平31(家ホ)13号・令2(家ホ)18号)
夫X(ナイジェリア国籍)からの妻Y(フィリピン国籍)に対する離婚請求等が問題となった事例。XY双方の住所が日本にあることから管轄肯定(人訴法3条の2第1号)。離婚準拠法として日本法を適用(通則法27条本文、25条)。
+大阪地判令和3・1・21(裁判所Web、平30(ワ)5041号)(2021-07種村)
Xの行為がYの特許権を侵害しないことの確認と、Yによる米国訴訟追行につき損害賠償請求。米国特許権に関する請求は却下(民訴法3条の9)。不法行為につき、日本法上不成立とし棄却(通則法22条1項)。契約準拠法は日本法(同法8条2項・1項)。
-東京高判令和3・1・13(2021WLJPCA01136002、令2(ネ)2203号)
ペルー人間での離婚請求等に関する静岡家浜松支判令和2・4・21の控訴審判決。養育費支払につき、日本民法766条1項等にいう「子」は必ずしも未成年か否かと連動しないとし、ペルーの成年年齢と異なり20歳迄の養育費支払を命じた原判決支持。
- 東京地判令和2・12・10(2020WLJPCA12108021、令2(ワ)1116号)
Xが不動産の売買代金を源泉徴収せずにYに支払ったことを理由に不当利得返還請求。請求に関連する契約の内容から債務履行地により管轄肯定(民訴法3条の3第1項、3条の6)。契約に関連した請求で、契約が日本で締結されたことから日本法適用。
+ 東京地判令和2・12・8(2020WLJPCA12088005、平31(ワ)291号)(2023-01楢﨑)
X(日本法人)がY(ケイマン法人)に対し、電子取引契約に基づき、デリバティブ取引等の為に要した費用等の支払を請求。本件契約の準拠法である日本法上、債務履行地は債権者の現在の営業所がある地であるとし、管轄肯定(民訴法3条の3第1号)。
+東京地判令和2・11・13(2020WLJPCA11138005、平29(ワ)15108号)(2021-07嶋)
土地の明渡等に関し、香港で亡C(英国国籍)が作成した遺言の有効性及び内容が問題となった事例。遺言の実質的内容については相続準拠法(通則法36条)に依るとしつつ、英国は地域的不統一法国であるとし、香港法を適用(同法38条3項)。
-東京地判令和2・10・23(2020WLJPCA10238005、令元(ワ)23389号)
X(日本国籍)がY(日本国籍)に対し、Xの元夫A(日本国籍)との不貞行為を理由に慰謝料等支払請求。XとAの婚姻共同生活地を理由に、結果発生地がカリフォルニア州であるとし(通則法17条)、同法20条の適用もないとして、同州法を適用。
-東京地判令和2・10・23(2020WLJPCA10238004、令元(ワ)27486号)
台湾の民間放送局Xが、日本の民間放送局Yがテレビ放送をした番組において名誉を毀損されたと主張して、Yに対し損害賠償等請求。準拠法は台湾法としたものの(通則法19条)、日本法上名誉毀損にならないとして(同法22条1項)、請求棄却。
-東京地判令和2・10・16(2020WLJPCA10168004、平30(ワ)21010号)
A(韓国国籍)の長男XがAの長女Yに対し、Aの生前及び死後にYがA名義の預金を無断で払戻して金員を領得したと主張し、不法行為に基づく損害賠償請求を行った事例。Aの相続に関しては本国法である韓国法が適用されるとの言及(通則法36条)。
-東京地判令和2・10・6(2020WLJPCA10068005、平29(ワ)30172号)
リベリア船籍の貨物船に発生した事故に関し、船舶所有者(リベリア法人)が主機関のライセンサー(日本法人)等に対し損害賠償等請求。応訴により管轄肯定(民訴法3条の8)。日本法適用を前提とした訴訟活動から日本法適用(通則法9条・21条)。
-東京地判令和2・9・16(2020WLJPCA09168007、令2(ワ)4343号)
Xが、地域信用組合Yに対し、Yにおける各預金がXの父B(韓国国籍)に帰属していた仮名預金口座であり、Bの死亡後、遺産分割協議によりXが取得したと主張し、払戻請求。Bの相続については韓国法が適用されるとの言及がある(通則法36条)。
-東京家審令和2・9・10(D1-Law28291281、令2(家イ)4841号)
X(日本国籍)がY(日本及びルーマニア国籍)に対し親子関係不存在確認請求。認知につき、Yは重国籍者であるものの、嫡出親子関係不存在が確認されると日本国籍を有しないことになるから、ルーマニア国籍のみにより準拠法を検討すべきと判示。
-東京家審令和2・9・7(D1-Law28291279、令2(家)2093号)
X1(カナダ国籍)及びX2(日本国籍)による未成年者Aについての特別養子縁組申立。Xら及びAが何れも日本国内に住所を持つことから管轄肯定(家事法3条の5)。X1との関係でもカナダ法からの反致により日本法を適用(通則法31条1項、41条)。
-東京高決令和2・9・3(D1-Law28291284、令2(ラ)1299号)
ハーグ子奪取条約に基づく子らの米国への返還申立。子の常居所地は、諸事情を総合的に考慮し、当該子が当該国と密接な結びつきを持ち社会環境・家庭環境に統合しているかといった観点で判断すべきであり、親の意思は補充的要素に留まると判示。原決定は東京家決令和2・7・3(令和4年リストに掲載)
-東京地判令和2・7・30(2020WLJPCA07308010、平28(ワ)34157号)
株主合作契約に関し出資金を交付したとするX(中国人)が、Y1に対し損害金の支払等、Y2に対し、不動産売買の委任等に関し不当利得返還等を請求。Y1への不法行為に基づく請求につき中国法、他の請求につき日本法を準拠法とする合意を認定。
-東京高判令和2・7・22(D1-Law28290599、令2(ネ)37号):
東京家立川支判令和元・11・28の控訴審判決。準拠法については原判決踏襲。
-東京地判令和2・6・26(D1-Law29060222、平29(ワ)39429号)
亡A(韓国籍)の子Yが、A名義の預金口座から、法定相続分を超える支払を受けたこと等による不当利得返還請求権を譲り受けたとし、XらがYに対し返還等請求。Yの居所も財産も日本にあったとして管轄肯定(民訴法3条の2第1項・3条の3第3号)。
-東京地判令和2・6・16(D1-Law29060206、平27(ワ)12549号)
X(日本法人)が、A(韓国法人)から購入したLED照明器具等に瑕疵があったため、Aの訴訟承継人Yら(韓国法人)に対し損害賠償等請求。基本契約の内容から、ウィーン売買条約の適用は制限されると判示(条約6条)。損害賠償債務の履行期等は日本法。
-静岡家浜松支判令和2・4・21(2020WLJPCA04216002、平31(家ホ)15号)
X(ペルー国籍)からのY(ペルー国籍)に対する離婚・親権者指定・養育費支払請求。離婚・親権者指定につきペルー法(通則法27条・25条、32条)、養育費につき子らの常居所地法である日本法を適用(扶養義務の準拠法に関する法律2条1項)。
-東京家審令和2・4・17(D1-Law28291276、令2(家)1427号)
未成年者A(フィリピン国籍)についての養子縁組許可申立。何れも日本に住所があることから管轄肯定(家事法3条の5)。X1(日本国籍)との関係では日本法と、フィリピン法の保護要件、X2(フィリピン国籍)との関係ではフィリピン法(通則法31条1項)。
-広島高決令和2・3・25判時2472号31頁
フィリピン居住のXが、日本人父Aとフィリピン人母Bとの間に出生したとして就籍許可申立。XがAの嫡出子であるかを、Xの出生当時AがBの夫であった点を日本法・フィリピン法により肯定した上で(平成元年改正前13条1項)、日本法により判断し(同17条)、申立認容。
-東京家判令和2・3・23(判タ1483号251頁)
X(米国国籍・日本居住)がY(検察官)に対し、在D総領事への届出によりなされた亡Eとの離婚につき無効確認請求。離婚準拠法としてカリフォルニア州法を適用(通則法27条、38条3項、34条1項)。同州法上協議離婚は認められていないとし、当該離婚は無効と判示。
-東京地判令和2・3・4(2020WLJPCA03048010、平30(ワ)30939号)
X(韓国籍)が、日本国籍を与えられないのは違法だ等と主張し、Y(国)に対し損害賠償等請求。昭和59年改正前国籍法2条1号に該当するためには、生物学的関係だけでなく、出生時に日本人父との間に法律上の父子関係が存在せねばならぬと判示。
-静岡家浜松支審令和2・1・14(家判34号120頁)
日本人夫婦A・Bが、ウクライナでウクライナ人が代理出産したCにつき特別養子縁組の申立。A・Bが何れも日本国籍であること、Cは重国籍者であるもののその常居所地から日本法が本国法になるとし(通則法38条1項)、日本法が適用されると判示(同法31条1項)。
-東京家立川支判令和元・11・28(D1-Law28290598、平30(家ホ)286号)
妻X(韓国国籍)が夫Y(朝鮮国籍)に対し、離婚、離婚慰謝料の支払及び年金分割請求。離婚及び離婚慰謝料につき、同一常居所地法として日本法を適用(通則法27条、25条)。年金分割は、日本の法制度であるから当然日本法が準拠法だとした。
-大阪高判令和元・10・4(LEX/DB25590568、平31(ネ)277号)
最判平成31・1・18の差戻審判決で最判令和3・5・25の原判決。Yは控訴期限前に手続の一環である電子メールを契機に外国判決を了知しており当該手続は公序に反せず、又、カリフォルニア州における懲罰的賠償債権の存在は否定されないと判示。