令和2年度の国際私法に関連する主な裁判例

(冒頭の + は渉外判例研究会で報告済み又は報告予定の裁判であること、あるいは上訴審判決が報告済み等の理由から報告対象とならない裁判であることを示す。)

 令和2年度重要判例解説(有斐閣)のために横溝大教授(名古屋大学)が収集中の国際私法関連の裁判例を、裁判年月日の新しいものを先に掲載した。各裁判例の紹介も横溝教授による。前年度以前のリストもあわせて参考にされたい。

 

◎ 令和2年度重要判例解説掲載の裁判例

+ 東京高判令和2・7・22(D1-Law28283185、令元(ネ)5049号)(2021-09後友香)
X(日本法人)がY(加州法人)に対し、部品の継続的製造供給に関し、不当な代金減額要求等を理由に損害賠償を求めた東京地判令和元・9・4の控訴審判決。外国裁判所を指定する専属的管轄合意が一定性要件を充たし公序にも反しないとし、訴え却下。
+ 最判令和2・7・7(裁判所Web、平31(受)184号)(2020-11神前)
X(帰化により日本国籍取得)が、亡A(日本国籍)との親子関係存在確認等請求。平成元年改正前における非嫡出子の母との間の分娩による親子関係の成立については、通則法29条1項の適用が相当だとし、旧法例18条1項を準用し日韓法を累積適用した原審を破棄。
- 最判令和2・4・16(判タ1476号56頁)
Y(ロシア人)がX(日本人)に対し行った子の返還申立に関し家事調停が成立して合意がなされた後、Xが事情の変更を主張し返還条項の変更を請求。裁判所は、実施法117条1項の規定を類推適用して、当事者の申立により、子の返還条項を変更することが出来ると判示。
+ 東京高判令和元・9・25(判タ1470号75頁)(2020-08種村)
X(日本人)の夫Y1(日本人)及びその不貞行為の相手方であるY2(日本人)に対し、Xが慰謝料等支払請求。何れに対する請求についても不法行為と性質決定。結果発生地が複数の場合、最も重大な結果が発生した地を結果発生地とすべきであるとし、日本法を選択。

○ その他の裁判例

- 東京地判令和2・9・29(2020WLJPCA09298017、令2(ワ)12523号)
X(西オーストラリア州)が、Xに雇用され日本で勤務していたYに対し、Xからの生活手当の不正受給分につき損害賠償等の支払を認めた西豪州判決の執行を請求。応訴、公序違反性の欠如、相互の保証につきXの主張する「事実」を認め、請求認容。
+ 東京地判令和2・9・24(2020WLJPCA09248008、平31(ワ)6967号)(2022-03神前)
XがYに対し、Xの元夫Aとの不貞関係を理由に慰謝料等の支払を請求。侵害されるのは婚姻共同生活の平和であり、不貞行為の間Xが日本に居住していたことから、結果発生地により管轄肯定(民訴法3条の3第8号)。準拠法も日本法(通則法17条)。
+ 東京地判令和2・6・19(2020WLJPCA06198015、令元(ワ)18933号)(2021-07加藤紫帆)
X(米国人)がY(米国人)に対し、ニュージャージー州判決の内扶養料等の支払を命じた部分につき執行判決請求。間接管轄に関し、承認審査時点における日本の承認管轄規範に照らし、起訴又は判決時の事実を判断すべきと判示。請求認容。
- 東京地判令和2・6・19(2020WLJPCA06198007、平30(ワ)10883号)
日英法人間のディーラー契約中の仲裁合意が問題となった事例。主契約の準拠法及び仲裁地を理由に、仲裁合意の準拠法につき黙示の合意を認め英国法を選択(通則法7条)。その客観的主観的範囲を同法により判断し訴え却下(仲裁法14条1項)。
- 東京地判令和2・3・19(2020WLJPCA03198017、令元(ワ)20487号)
Xが、A(イラン国籍)に対する本件各建物についての賃貸借契約がAの賃料不払いを理由に解除されたとして、連帯保証人のYに対し、約定賃料相当損害金等の支払を求めた事例。XA間の関係についても日本法が適用されるとの判示(通則法8条1項)。
- 東京地判令和2・5・20(2020WLJPCA05208003、平29(ワ)33818号・平30(ワ)7370号)
Yによる欺罔により、Xらが、A社に貸付をし(第1事件)、X1が、台湾法人Bに出資をし(第2事件)、損害を受けたと主張して、Yに対し損害賠償等支払請求。第2事件につき、被告住所地管轄により管轄肯定(民訴法3条の2第1項)。
+ 千葉家松戸支判令和2・5・14(LEX/DB25565645、令元(家ホ)73号)(2020-08岩本)
X(ナイジェリア人男性)がY(ナイジェリア人男性)に対し、Yとの離婚後Xと婚姻したg(日本人女性)が産んだeが、自らの子であることの確定を請求。前婚と後婚とで嫡出推定が重複した場合、条理で判断すべきだとし、民法773条を類推適用。
- 名古屋地判令和2・2・28(LEX/DB25565329、平29(ワ)4241号)
Xら(一人はタンザニア国籍)が、ホテルを経営するY1社及びその従業員らが、正当な理由なくXらのホテルへの入館を拒否したことにより精神的損害を被ったとして、Yらに対し慰謝料等支払請求。Y1社に対する請求認容。準拠法に関する判断なし。
- 東京高判令和2・2・26(裁判所Web、令元(ネ)2243号)
日本人同士の婚姻において、戸籍法上旧氏続称制度がないことの違憲性が争われた東京地判平成31・3・25の控訴審判決。民法750条につき、日本人同士の婚姻にのみ適用され、日本人が外国人と婚姻する場合には適用がないと判示。
+ 東京地判令和2・2・25(2020WLJPCA02258007、平30(ワ)18314号)(2021-12村上)
Y2(日本法人)雇用、Y1(日本法人)出向中のX1が、マレーシア出張中交通事故に遭ったことから、Yらに対し損害賠償等支払請求。通則法20条の「当事者」には民法715条等に基づき責任を負う者は含まれないとし、マレーシア法を選択(同法17条)。
- 大阪地判令和2・2・21(LEX/DB25565172、令元(ワ)8831号)
外国人技能実習生の受入支援事業等を業とするY(日本法人)に雇用され、試用期間後解雇されたX(ベトナム人)が、Yに対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めた事例。擬制自白により請求一部認容。準拠法に関する判断なし。
- 東京地判令和2・2・14(判時2446号41頁)
メキシコ湾原油流出事故に関し、X(日本法人)が元受被保険者に対し保険金を支払ったとして、Yら(英国法人及びイタリア法人)に対し、再保険契約に基づき再保険金等支払請求。契約準拠法である日本法上、運命共同体原則が商慣習であるとは認められないと判示。
- 東京高判令和2・2・12(2020WLJPCA02126015、令元(ネ)3789号)
XY間でのソフトウェア設計開発業務に関する準委任契約に基づく報酬等の支払、及び、関連するメールが他者への送信に因る名誉・信用毀損が問題となった事例。準委任契約の準拠法及び他の各請求につき日本法を選択(通則法8条1項・17条)。
- 東京地判令和2・2・7(D-1Law29059521、平29(ワ)24547号)
X(中国法人)がY(日本法人)に対し、売買契約に基づいて、Xが目的物をYに納品したが、Yが代金の一部を支払わないと主張して、売買残代金等の支払を求めた事例。当事者間で売買契約の準拠法を日本法とする合意がなされたとの認定。
- 東京地判令和2・2・6(2020WLJPCA02068016、平29(ワ)29952号・平31(ワ)4852号)
X(日本国籍)がY(中国国籍)に対し貸付元本等の支払を、Yが反訴として不当利得返還等を請求。本訴・反訴共に管轄肯定、日本法を準拠法とすることに争いはないと判示(民訴法3条の2、3の3第3号、3条の8、通則法8条1項)。
- 東京地判令和2・2・5(D1-Law29059183、平30(ワ)7860号)
Y(日本法人)が運航する船舶に乗船した亡G(中国国籍)が行方不明となったことから、亡Gの両親XらがYに対し、債務不履行による損害賠償等を求めた事例。相続準拠法として中国法を適用。国際旅客運送契約の準拠法を日本法とする準拠法条項に言及。
- 東京家判令和2・2・3(D1-Law28281074、平29(家ホ)995号・令元(家ホ)513号)
夫X(日本人)が妻Y(米国人)に対し離婚を求める本訴を提起し、YがXに対し離婚及び離婚慰謝料等の支払を求める反訴を提起。離婚準拠法として日本法を適用(通則法27条但書)。慰謝料請求についても離婚準拠法によると判示。
- 東京地判令和2・1・29(2020WLJPCA01298014、平30(ワ)20077号)
X(中国法人)がY(日本法人)に対し、委託に基づき原材料を加工し製品を引渡したとして、加工契約に基づき加工賃等を支払請求。加工契約の準拠法(通則法7条)、遅延損害金の法定利率が日本法によることにつき、当事者間に争いなしとの判示。
+ 東京地判令和2・1・22(裁判所Web、2020WLJPCA01229001、平30(ワ)11982号)(2021-10伊藤敬也)
漫画の著作権者Xが、Y(カリフォルニア州法人)に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき発信者情報開示請求。Yが日本国内の顧客に向けて日本語で記載されたウェブサイトを開設していること等から管轄肯定(民訴法3条の3第5号)。
- 東京地判令和2・1・14(2020WLJPCA01148007、平29(ワ)21999号)
亡F(韓国籍)の相続人である亡X1(死亡後X2、X3、X4が相続)及びX5が、Fの公正証書による遺言の無効の確認を請求。被告住所により管轄肯定(民訴法3条の2)。遺言の成立及び効力につき韓国法を適用(通則法37条1項、韓国国際私法50条1項)。
- 静岡家裁浜松支判令和元・12・24(2019WLJPCA12246001、令元(家ホ)40号)
ブラジル人Xからのパキスタン人Yに対する離婚及び親権者指定請求。離婚につき、同一常居所地として日本法を適用(通則法27条、25条)。親権者指定につき、子は無国籍であるとし、子の常居所地法として日本法を適用(通則法32条)。
- 東京地判令和元・12・20(2019WLJPCA12208017、平30(ワ)39164号)
Xが、別居中の配偶者Y(何れも韓国国籍)との間で、YがXに対し婚姻費用を支払う旨の合意が成立したと主張し、Yに対し未払婚姻費用等支払を請求。両者が日本国内で生活していることから、最密接関係地法として日本法を適用(通則法8条)。
+ 東京家審令和元・12・6(判時2456号123頁、家判29号129頁、令元(家)4650号・4651号)(2021-05岩本)
X(日本国籍)がY(A国籍)に対し、親権者指定申立。子らの住所により管轄肯定(家事手続法3条の8)。同一本国法として日本法を選択(通則法32条)。共同親権とした外国裁判を承認した上で(民訴法118条)、Xの単独親権に変更(民法819条6項)。
+ 東京高判令和元・12・5(2019WLJPCA12056017、平31(ネ)1390号)(2022-09小池)
X(クウェート法人)がY(日本法人)に対し、診断用ガイドワイヤーの供給拒否等を理由に、債務不履行等に基づき損害賠償等請求。管轄肯定(民訴法3条の2第3項)。債務不履行・不法行為何れについても日本法を適用(通則法8条1項2項、20条)。
- 東京高判令和元・11・27(金商1587号14頁)
所得税法2条1項3号にいう「居住者」の解釈が問題となった事例。Xの就業活動がシンガポールを本拠として行われていたこと、日星の滞在日数に有意な差は認められないこと等を総合すると、Xの生活の根拠が日本にあったとは言えず、「居住者」に該当しないと判示。原判決である東京地判令和元・5・30金商1574号16頁も略同様の判示。
- 東京地判令和元・11・13(裁判所Web、平28(ワ)39687号・平30(ワ)1631号)
日本法人XがNY州法人Y2に対し、契約上の義務不履行を理由に、前払金の返還等を求めた事例。債務履行地により管轄肯定(民訴法3条の3第1号)。遅延損害金の発生時期及び割合につき、契約準拠法であるNY州法により判断。
- 東京高判令和元・10・29(2019WLJPCA10296005、平30(ネ)2718号)
Xら(日本の銀行)が外国国家Yに対し、Y発行の円建債券を保有する債権者の訴訟担当者として当該債券の償還等を求めた東京地判平成30・3・26の控訴審判決。請求権が債券発行という商業取引に基づく以上、裁判権免除は認められないと判示。
- 東京地判令和元・9・25(2019WLJPCA09258013、平30(ワ)21860号)
X(中国法人)が、Aの中国ライブツアーのために、Y(日本法人)との間で、A所属事務所との折衝を委任する契約を締結し保証金を支払ったが、ツアーが出来なかったことから保証金返還等請求。遅延損害金も含め契約準拠法である中国法で判断。
- 東京地判令和元・9・13(金商1581号42頁)
日本法人の元執行役員が、タイでの火力発電所建設工事の際、公務員に対し、下請業者の従業員を介し現金供与を了承し、有利な取扱を受けた点につき、意思決定での中心的役割等から、不競法違反の共謀共同正犯が成立すると判示(刑法60条、不競法21条7号、18条1項)。
- 東京地判令和元・8・9(2019WLJPCA08098011、平30(ワ)14635号・平30(ワ)37318号)
X(シンガポール法人)とY(日本法人)が、Y又はXに対するクレジットカード決済代行契約に基づく支払請求権を譲り受けたと夫々主張し、支払請求。反訴につき管轄否定(民訴法3条の2第3項、3条の3第1号・第3号、146条3項)。
- 東京地判令和元・8・27(2019WLJPCA08278008、平28(ワ)42929号)
X(中国法人)が、Y(日本法人)との間で締結した冷凍うなぎについての売買契約に基づき、残代金等の支払を請求。特徴的給付を行う売主の常居所地は中国であり(通則法8条2項)、推定を覆す事情もないとして中国法を適用(同法8条1項)。
- 東京地判令和元・8・26(2019WLJPCA08268008、平30(ワ)33972号)
韓国の裁判所においてYに対する確定判決を取得したXが(何れも韓国に住所を有する)、日本の株式会社の株式を保有するYに対し、執行判決を求めた事例。民訴法118条の要件を何れも具備するとして請求認容。
- 最決令和元・7・9(、平成30年(オ)第1444号/平成30年(受)第1766号)
東京高判平成30・7・11(平30(ネ)796号)の上告審。上告棄却・不受理。
- 東京地判令和元・6・3(2019WLJPCA06038003、平30(ワ)9632号)
スペイン法人Xが日本法人Yに対し、売買契約に基づき代金等支払請求。Yの本店所在地により管轄肯定(民訴法3条の2第3項)。CISG適用(CISG1条1項a号)。その他の事項につきスペイン法適用(通則法8条1項・2項)。Y、請求原因事実争わず。
- 東京地判令和元・5・15(D1-Law29055835、平31(ワ)4496号)
フィリピン人間の慰謝料を巡る紛争。被告不出頭のため擬制自白により請求認容。準拠法につき、結果発生地法として日本法が適用されるとの判示(通則法17条)。
- 東京地判令和元・5・9(D1-Law29055618、平30(ワ)25237号)
Xが、Y(ロシア法人)の運航便に空港で置き去りにされたことから損害が生じたと主張し、Yに対し、不法行為等に基づき損害賠償等支払請求。前提となる事実関係が認められず、準拠法等を検討するまでもなくX主張は採用出来ないとして請求棄却。
- 東京高判令和元・5・8(労判1216号52頁)
技能実習生として、Y(日本人)との間の雇用契約により日本で稼働していたX(中国国籍)が、Yから意思表示を受けた解雇が無効であるとして、Yに対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を請求。日本法に基づき請求棄却(準拠法に関する言及なし)。
- 東京地判平成31・4・16(LEX/DB25580022、平30(ワ)28302号)
X(日本法人)が、Yらとの間で金銭消費貸借契約等を締結したとして元金等の支払を求めた事例。ケイマン法人Y2との銀行取引約定に関し、日本法を指定する準拠法条項、Xの本店又はXの取引店の所在地の裁判所を指定する管轄合意条項への言及有。
- 東京地判平成31・3・28(裁判所Web、平28(ワ)21762号・平29(ワ)21804号・平30(ワ)24431号)
日本での特許権侵害に基づく対象製品の製造・販売等の差止等及び損害賠償等請求。関連する契約中の専属的管轄合意条項が第三者であるYらにも及ぶというYらの主張を退け、管轄肯定(民訴法3条の2第3項)。
- 東京高決平成31・3・27(判時2444号13頁)
子のブラジルへの返還申立に関する東京家決平成31・2・4の抗告審決定。Xは日本に再入国する意思を有していたと伺えるものの、それは在留資格に関する必要性等に由るものに過ぎない等として、原決定同様Cの常居所地国をブラジルと認定しつつ、抗告棄却。
- 東京地判平成31・3・25(D1-Law29054563、平30(ワ)3813号)
Xが亡Y1の相続税を代納したことによって発生した求償金等の支払をY(Y1の弟、訴訟を承継)に対して命ずる韓国判決の我が国での執行が問題となった事例。請求原因事実につき当事者間に争いがないことを主たる理由に請求認容。
- 京都地判平成31・3・22(自保ジャーナル2051号42頁)
交通事故で死亡した被害者の遺族及び保険会社からの加害者らに対する損害賠償等請求。損害賠償請求権の相続につき、反致による日本法適用についての言及がある(通則法36条、α国渉外民事関係法律適用法31条、通則法41条)。
- 東京地判平成31・3・8(2019WLJPCA03088019、平28(ワ)37881号)
弁理士X1が、Y(日本法人)から外国特許等に関し委任を受けたと主張し、報酬及び費用等の支払を求め、支払督促が発せられたのに対し、Yが異議申立。X1と韓国現地代理人との間の相殺合意の準拠法につき、日本法又は韓国法になるとの言及。
- 東京地判平成31・3・7(裁判所Web、平28(ワ)42833号・平29(ワ)21803号・平30(ワ)27979号)
日本での特許権侵害に基づく対象製品の製造・販売等の差止等及び損害賠償等請求。関連する契約中の専属的管轄合意条項が第三者であるYらにも及ぶというYらの主張を退け、管轄肯定(民訴法3条の2第3項)。
- 東京高決平成31・2・28(判時2445号53頁)
ロシアへのCの返還請求に関する東京家決平成30・11・30の抗告審決定。ロシア裁判所が、YがCを連れ日本に出国することの許可決定を下した点につき、決定理由を考慮しても(実施法28条3項但書)、猶返還事由が認められるとの判断は妨げられないとし、抗告棄却。
- 東京家決平成31・2・4(判時2444号16頁)
Cの父X(ブラジル国籍)が母Y(D国籍)に対し、ブラジルへの返還申立。Cが1年以上ブラジルの保育園に通園していたこと、ブラジル国民として生活上必要な各種手続を採っていたこと等から、Cの常居所地国をブラジルとし、返還拒否事由もないとして、返還命令。抗告審は東京高決平成31・3・27。
- 東京家決平成30・12・11(判時2444号53頁)
X(スペイン国籍)がY(日本国籍)に対し、3人の子をスペインに返還するよう求めた事例。本件申立は、留置開始後1年を経過してなされ、また、本件子らは日本での生活に適応しており、実施法28条1項1号に規定する返還拒否事由が認められるとして、申立却下。
- 東京家決平成30・11・30(判時2445号58頁(参考))
子Cの父である申立人Xが、母である相手方Yに対し、Cのロシアへの返還を求めた事例。ロシアへの返還事由があると認められ、返還拒否事由は何れも認められないとして返還命令。
- 横浜地判平成30・10・30(D1-Law28281321、平29(ワ)2773号)
X(日本人)の夫Y1(日本人)及びその不貞行為の相手方Y2に対し、Xが慰謝料等の支払を求めた東京高判令和元・9・25の原判決。不法行為と性質決定した上で、婚姻関係破綻当時のXの生活の本拠を理由に結果発生地をNY州であるとし、同州法を適用。
- 東京高決平成30・5・18(判時2443号20頁・判タ1472号115頁)
父である申立人Xから母である相手方Yに対するシンガポールへの子の返還請求に関する東京家決平成30・2・13の抗告審決定。原決定同様、留置の同意(実施法28条1項3号)及び重大な危険(同法28条1項4号)の各拒否返還事由を認め、抗告棄却。
- 東京地判平成30・3・27(2018WLJPCA03278038、平28(ワ)21399号)
Xが、マカオ設立のペーパーカンパニーAはXに対し出資額の支払債務を負うとした上で、法人格否認の法理又は会社法818条2項に基づき、Yに対し当該金員等の支払請求。法人格否認の準拠法、会社法818条2項の適用プロセスに関する判示なし。
- 東京家決平成30・2・13(判時2443号23頁)
父であるXから母であるYに対するシンガポールへの子Aの返還請求。Xによる留置の同意がある上(実施法28条1項3号)、YとAがシンガポールに入国した場合、暴力等をXから受ける惧れがあり、重大な危険があるとして(同法28条1項4号)、申立却下。
- 奈良家判平成29・12・15(LLI/DB判例秘書L07260020、平28(家ホ)64号)
X(外国籍)が、戸籍上の嫡出子Yに対し、Xの元妻A(日本国籍)が、Xの同意なく、凍結保存されていた受精卵を使用しYを誕生させたことを理由に、親子関係不存在確認請求。Aの本国法である日本法(通則法28条)により、嫡出性を肯定。
- 東京高判平成29・9・13(2017WLJPCA09136018、平29(ネ)501号)
亡A(韓国国籍)の相続につき、相続人Xが、相続人Y2が自己の相続分を放棄した等と主張し、Y2が被相続人の遺産について相続権を有しないことの確認を求めた東京地判平成28年12月21日の控訴審判決。原判決同様韓国法を適用(通則法36条)。
- 千葉地判平成28・11・8(2016WLJPCA11086016、平25(ワ)1989号)
A(韓国国籍)の相続人Xらが、Aの妻Yに対し、相続分につき価額支払請求等の支払を求めた事例。Xら及びYの住所、更に遺産も日本に所在することから管轄肯定。準拠法としてAの本国法である韓国法を適用(通則法36条、韓国国際私法49条1項)。
- 東京地判平成27・2・27(2015WLJPCA02278003、平24(ワ)28522号)
XがYに対し勤務中の未払割増賃金等を請求。上海市労働人事争議仲裁委員会の仲裁裁決が問題となったが、同裁決が、仲裁合意に基づいていないこと、又、確定判決と同様の効力を有するものではないことから、仲裁判断に該当しないと判示。