平成31年=令和元年度の国際私法に関連する主な裁判例

(冒頭の + は渉外判例研究会で報告済み又は報告予定の裁判であること、あるいは上訴審判決が報告済み等の理由から報告対象とならない裁判であることを示す。)

 令和元年度重要判例解説(有斐閣)のために横溝大教授(名古屋大学)が収集中の国際私法関連の裁判例を、裁判年月日の新しいものを先に記載した。各裁判例の紹介も横溝教授による。前年度以前のリストもあわせて参考にされたい。

 なお、令和元年度重要判例解説の評釈対象判例は、原則として平成30年11月1日から令和元年10月31日言い渡し分までである。

1. 令和元年度重要判例解説掲載の裁判例

- 知財高判令和元・9・20(平30(ネ)10049号、裁判所Web)
X(スイス法人)が、パートナーシップ契約を締結したY(日本法人)に対し、営業秘密侵害等を理由に損害賠償等支払等請求。契約は準拠法条項から、不正競争は不正使用・不正開示が日本で行われたことから、何れも日本法を適用(通則法7条・17条)。
+ 最判平成31・1・18(平29(受)2177号、裁判所Web、民集73巻1号1頁)(2019-07 横溝)
カリフォルニア州判決についての執行判決請求。外国訴訟手続において、内容を了知させることが可能だったにも拘らず、実際には不服申立ての機会が与えられないまま判決が確定した場合、当該手続は公序に反する(民訴法118条3号)として破棄差戻し。
- 東京家審平成31・1・17(平30(家ホ)363号、LEX/DB25562349、家判22号121頁)
ミャンマー国籍のイスラム教徒で、永住者資格で日本在留の夫婦において、Yが一方的に離婚を宣言した為、Xが離婚・親権者指定等を請求。Yの住所地から管轄肯定。タラーク離婚を認めること等が公序違反とし、イスラム法を排除し日本法を適用。家判22号121頁では、上記DBで省略されていた別紙「本件における準拠法決定プロセス」及び「本件における外国準拠法の根拠」が参照出来る(126頁)。
- 東京高判平成31・1・16(平30(ネ)3037号、D1-Law28271847)
Xが、Yの民事再生手続において届け出た債権の一部等の支払を求めた東京地判平成30・5・9の控訴審判決。不当利得返還請求につき定期傭船契約との関連性から英国法を(通則法15条)、残存燃料代請求につき買取合意に着目し日本法を適用(同8条2項)。
+ 東京地判平成30・3・26(平28(ワ)19581号、2018WLJPCA03268007)(2019-07 加藤紫帆)
日本の銀行である原告Xらが、外国国家である被告Yが発行した円建て債券を保有する債権者らから訴訟追行権を授与された訴訟担当者として、Yに対し、当該債券の償還並びに約定利息及び遅延損害金の支払を求めた事例。Yは本件訴訟について我が国の民事裁判権から免除されないとして本案について検討。明文規定がないこと、及び、立法経緯から第三国の強行的適用法規の適用を否定。本件支払延期措置がYの国内で与えた影響を日本法の解釈において事実上考慮することについても、その実質は契約準拠法である日本法の範囲内で第三国法の事実的影響を評価するにとどまらず、日本法の適用を排除して第三国法をそのまま妥当させることにほかならないとしてこれを否定。
- 大阪高決平成29・2・24(家判19号83頁)
オーストラリアへの子の返還請求に関する大阪家決平成28・11・29の抗告審決定。子が幼児の場合、子の常居所については定住に向けた両親の意図を踏まえて判断するのが相当とし、子の常居所がオーストラリアであることを認めず抗告棄却。

2. 令和元年度重要判例解説「国際私法判例の動き」で詳しく紹介された裁判例

- 東京地判令和元・9・30(平30(ワ)26043号、2019WLJPCA09306001)
夫婦同氏制を規定する民法750条の違憲性が争われた事例。外国人との婚姻には夫婦別氏が認められていることとの関係につき、外国人との婚姻による氏の問題は当事者の本国法によるのであり、渉外婚姻の性質に応じた合理的根拠に基づくと判示。
- 静岡家浜松支審令和元・9・17(令元(家)2055号・2056号・2057号、2019WLJPCA09176001)
夫婦が別居し、未成年者Aらの父Xが、Aらを監護養育しているAらの母Yに対し、Aらとの面会交流を求めた事例。X、Y及びAらが何れもペルー国籍であることから、面会交流に関する準拠法はペルー法と判示(通則法32条)。
+ 東京地判令和元・9・4(平26(ワ)19860号、2019WLJPCA09048001)(2020-07加藤)
Y(米国法人)販売のパソコン用部品の製造・供給を継続的に行っていたX(日本法人)が、債務不履行又は不法行為に基づき損害賠償等請求。準拠法条項が無効とのXの主張を退けカリフォルニア州法を適用(通則法7条)。不法行為も同州法を適用(20条)。
- 東京地判令和元・6・17(平30(ワ)36570号、2019WLJPCA06178003)
韓国法人が日本法人に対し債務不履行に基づき損害賠償等請求。本契約から生ずる紛争を「日本法準拠による東京での仲裁」に付する仲裁条項につき、日本法についての明示の合意があるとし、仲裁法2条1項にいう仲裁合意の成立を認め訴え却下
- 東京高判平成31・4・25(平30(ネ)3440号、2019WLJPCA04256015)
X(日本法人)が、Y(米国法人)との業務委託契約に基づき前払した委託料につき不当利得返還等請求。Yが日本国内で閲覧可能な日本語サイトのサーバー管理等の業務を行っており、本件訴えは当該業務に関するとし管轄肯定(民訴法3条の3第5号)。
- 大阪地判平成31・4・11(平30(ワ)233号・平30(ワ)3589号、裁判所Web)
ウクライナ人女性と日本人男性との結婚支援を行う日本法人Xが、Yら(日本法人)によるウクライナの結婚相談所への誹謗中傷行為等が名誉・信用毀損だと主張し、損害賠償等請求。Xの主たる事業所を理由に日本法を適用(通則法19条)。
- 東京高判平成31・4・10(平30(ネ)5380号、D1-Law28271755)
Y(フィリピン国籍)が日本語研修の際締結した保証契約に基づく請求権を譲り受けたXが、Yに対しその一部等の支払を請求。管轄肯定(民訴法3条の2第1項・3条の8)。保証契約、債権譲渡に係る対抗要件の準拠法は日本法(通則法12条3項・8条1項・23条)。
- 東京地判平成31・3・18(平29(ワ)16767号、2019WLJPCA03188005)
Aの四女Xが、Aの長男Yとの間で、対象土地の賃借権がAの遺産であることの確認を求めた事例。Aの長女F(米国籍取得)の相続分のF死亡による相続につき、カリフォルニア州法により、本件借地権の相続については日本法が準拠法となると判示。
- 大阪高判平成31・3・11(平29(ラ)1552号、D1-Law28274442)
JCAAでの仲裁判断につき取消が求められた最判平成29・12・12の差戻審決定。当該仲裁判断迄に仲裁人は本件事実を認識しておらず、且つ合理的な範囲の調査で本件事実が通常判明し得たとは言えないから、仲裁法18条4項の開示義務違反はないと判示。
- 東京地判平成31・2・22(平30(ワ)6632号、2019WLJPCA02228023)
クウェート法人が、日本法人と締結した独占的販売代理店契約に基づき、製品を発注し代金を支払ったが納品がなかったため、個別契約を解除したと主張し既払代金等の支払等を請求。最密接関係地法として日本法を適用(通則法8条1項2項・20条)。
- 東京地判平成31・2・8(平28(ワ)26612号・26613号、裁判所Web)
ファッションデザイナーX1(NY出身)及びそのマネジメント会社X2(NY法人)が、Y(日本法人)に対し、著作権侵害等を理由に差止・損害賠償等請求。著作権の帰属につき、「使用者と被用者の雇用契約の準拠法国である米国著作権法…による」と判示。
- 知財高判平成31・2・6(平30(行ケ)10124号、裁判所Web)
X(日本法人)の商標権につきY(フランス法人)による請求に基づき下された無効審決に対する取消請求。本件商標の使用が、日仏関係に悪影響を及ぼしかねず、国際信義に反し、両国の公益を損なう惧れが高いとし、商標法4条1項7号に該当と判示。
+ 知財高判平成31・1・24(平成30年(ネ)10038号、2019WLJPCA01249001、LEXDB 25449937)(2019-05 嶋)
サックス用ストラップを販売する日本法人Xが、同じくサックス用ストラップを販売するYに対し、不競法に基づき商品の販売等の差止め等及び損害賠償を請求。不法行為と性質決定した上で通則法20条により日本法を適用。
- 東京地判平成31・1・22(平29(ワ)19288号、2019WLJPCA01228006)
建物賃貸人の相続人Xらが、賃借人Y1に対し未払賃料等の支払等を求め、Y1から不動産の共有持分の贈与を受けたY2に対し、持分全部移転登記抹消請求。Xらの相続分につき、被相続人亡Cの国籍が韓国であることから韓国法により判断(通則法36条)。
- 東京地判平成30・12・6(平30(ワ)23209号、LEX/DB25558888)
スイス法人Xが、日本法人Yに対し、売買契約に基づき代金等の支払を求めた事例。ウィーン売買条約を適用(1条1項(a))。遅延利息の利率については、国際私法の準則に従いスイス法を適用(通則法8条2項)(但し、争いがないことに因る)。
+ 東京地判平成30・11・22(平27(ワ)31835号、2018WLJPCA11228013)(2020-10嶋)
Y3社(ケイマン法人)の業務執行取締役だったY1及びその前任者Y2により、Y3社の株式を不当に売却させられたと主張するX(日本法人)が損害賠償請求。不法行為地により管轄肯定(民訴法3条の3第8号・3条の9)。準拠法は日本法(通則法17条・20条)。
- 東京地判平成30・10・25(平27(ワ)22632号、D1-Law29051933)
ゴルフ用品の売買を巡って複数当事者の間で、消費貸借契約に基づく貸金返還請求や売買契約に基づく代金等の支払請求がなされた事例。ゴルフ用品に関する本件各売買契約の準拠法につき、日本法を準拠法とする黙示の合意があったと判示。
- 東京地判平成30・10・5(平29(ワ)18728号、2018WLJPCA10058007)
韓国判決についての執行判決が求められた事例。Yの訴訟代理人を通じた法的主張と控訴から、応訴管轄を認め民訴法118条2号要件が具備されるとしつつも、Yにつき破産手続における免責許可決定という請求異議事由が存在するとして請求棄却。
- 東京地判平成30・8・22(平30(ワ)5617号、2018WLJPCA08228001)
MARS関連金融商品の日本での販売に関する不当利得返還請求。消費者住所地により管轄肯定(民訴法3条の4第1項)。ネヴァダ州裁判所を指定する専属的管轄合意は、同法3条の7第5項により、又は、甚だしく不合理であり公序法に反して無効と判示。
- 東京地判平成30・8・20(平29(ワ)18152号、2018WLJPCA08208001)
スイス法人AのYに対する貸付金につき債権譲渡を受けたX(スイス法人)が、Yに対し残元本等支払請求。スイス法を指定する準拠法条項と仲裁合意条項があったものの、Yは仲裁合意の抗弁をせず、又、契約準拠法の日本法への変更を合意したと判示。(通則法9条)
- 東京地判平成30・8・10(平27(ワ)33396号・平28(ワ)41923号、2018WLJPCA08108003)
Xが、a(シンガポール法人)のY1(日本法人)に対する貸金債権の譲渡に基づき、Yらに対し支払請求。消費貸借等につき、日星両法を指定する準拠法合意は有効とは認め難いとし最密接関係地法として日本法を適用(通則法8条1項)。
- 東京地判平成30・7・25(平28(ワ)3120号、2018WLJPCA07258017)
X(日本人)がY(ブルキナファソ人)に対し、ブルキナファソを対象とする車両の輸出販売に関する委託契約において債務不履行があったとし、契約を解除し車両引渡等請求。最密接関係地法の日本法が準拠法であることに当事者間で争いがないと判示。
- 東京地判平成30・7・24(平29(ワ)19827号、2018WLJPCA07248005)
損保会社X(日本法人)が、Y(日本法人)との保険契約に基づき甜杏仁粉の輸入・販売に関し給付した保険金につき、Yに対し不当利得返還等請求。本件甜杏仁粉の引渡地が日本であるとし、台湾3社との間でも日本の製造物責任法を適用(通則法18条)。
- 大阪地判平成30・7・20(平29(ワ)8880号、2018WLJPCA07206015)
日本法人Xとその代表取締役を務めていたY(元ラグビー日本代表選手)との間で、インスタグラムのアカウントの帰属が争われた事例。インスタグラムがネット上で公開している利用規約から、本件契約の準拠法がカリフォルニア州法だとの認定有。
- 東京地判平成30・7・18(平29(ワ)21394号、2018WLJPCA07188007)
Y(韓国国籍・日本居住)と離婚したXが、元妻Yに対し、YがXとの婚姻期間中にした不貞行為を理由に慰謝料等の支払を求めた事例。X主張の不貞行為が日本国内で行われたものであることから管轄肯定(民訴法3条の3第8号)、日本法適用(通則法17条)。
- 東京地判平成30・7・18(平28(ワ)42977号、2018WLJPCA07188004)
Xが、建物に関する賃料未払を理由に賃貸借契約を解除し、Y1及び連帯保証人Y2(共にフィリピン国籍)に対し、連帯して未払賃料等の支払を求めた事例。不動産が日本に所在することから管轄肯定(民訴法3条の3第1号)、日本法適用(通則法8条3項)。
- 東京地判平成30・7・11(平30(ワ)10465号、2018WLJPCA07118014)
米国診療報酬請求債権(MARS)関連金融商品の日本での販売に関する不当利得返還請求。消費者住所地により管轄肯定(民訴法3条の4第1項)。ネヴァダ州裁判所を指定する専属的管轄合意は甚だしく不合理であり公序法に反するため無効と判示。
- 東京地判平成30・7・9(平29(ワ)37614号、2018WLJPCA07098001)
X(英国国籍)が、男性宅に滞在中に居合わせたその母と妻Yらによって精神的苦痛を被ったと主張して、Yらに対し慰謝料等の支払を求めた事例。不法行為地により管轄肯定(民訴法3条の3第8号)。不法行為準拠法として日本法を適用(通則法17条)。
- 東京地判平成30・7・6(平27(ワ)12036号、2018WLJPCA07068004)
太陽光発電プロジェクトに関する資産譲渡契約の債務不履行を巡る紛争。連帯保証していたノルウェー法人に対する請求につき、主観的併合により管轄肯定(民訴法3条の6但書)。日本の判決がノルウェーで執行出来ずとも特別の事情なし(3条の9)。
- 東京地判平成30・5・25(平28(ワ)21005号、2018WLJPCA05258010)
スイス法人Xが日本法人Yに対し、金銭消費貸借契約に基づく貸金の返還と遅延損害金の支払を請求。契約準拠法としてスイス法を適用(通則法8条1項)。相殺準拠法として、自働債権準拠法(イギリス法)と受働債権準拠法(スイス法)とを累積適用。
- 千葉地判平成30・4・11(平28(ワ)2114号、2018WLJPCA04116009)
中国法人Xが、コンテナハウス等購入代を日本法人Yと立替払するとの契約を締結したとし、Yに対し立替払金等の支払を請求。本件契約準拠法につき、両者が日本法を前提に訴訟活動をしていることから、準拠法合意を認め日本法を適用(通則法9条)。
- 東京家判平成30・3・29(平29(家ホ)1021号、D1-Law28264843)
C(フィリピン国籍)の子Xが亡B(日本国籍)の子であるとして認知請求。亡Bが日本国籍を有すること、亡Bの従前の住所地が日本にあること等から管轄肯定。認知につき亡Bの本国法である日本法を適用(通則法29条)。出訴期間徒過により訴え却下。
- 大阪地判平成30・3・6(平25(ワ)4163号、平26(ワ)4226号)
在日韓国人亡Aの配偶者Xが、亡AのY銀行に対する預金債権について、韓国法に従い法律上当然に分割承継したと主張し、Yに対し払戻請求。預金者に相続が発生した場合の承継の態様の問題として相続と性質決定し、韓国法を適用(通則法36条)。大阪高判平成30・10・23(平30(ネ)852号、同1553号)の一審判決。
- 東京地判平成30・3・1(平27(ワ)25547号、2018WLJPCA03018011)
日本上陸を許可されず退去命令処分を受けたフィリピン人らが、国に対し、国賠法1条1項に基づき損害賠償等請求。国籍法は、日本に住所を有していない者に、国籍法17条1項の要件を具備させるよう一定の配慮を国に求めるものではないと判示。
- 東京地判平成30・1・31(平26(ワ)15423号、D1-Law29048692)
X(インド法人)からのY(日本法人)に対する、為替先渡契約・当座貸越契約に基づく貸付金等支払請求。XとYが契約準拠法につき日本法に依る旨合意していることから、本件契約に係る私文書の作成名義の真正に係る推定についても日本法に依ると判示。
- 大阪高決平成28・8・29(判時2395号75頁)
フランスへの子の返還請求に関する大阪家決平成28・6・7の抗告審決定。フランスへの帰国を拒み、日本での生活を望む子の意思は非常に強く、Yからの働きかけや強い影響に依らずに、主に自らの体験した事実に基づいて意向を示したと判断出来るとして、原決定(大阪家決平成28・6・7(判時2395号78頁))を維持。
- 大阪高決平成28・7・7(家判18号99頁)
シンガポールへの子の返還請求に関する大阪家決平成28・3・31の抗告審決定。シンガポール裁判所の子に関する「監護の権利」が侵害されている可能性を認めつつも、一連の経過から結局同裁判所の「監護の権利」が侵害されているとは認められないと判示。
- 東京高決平成27・7・14(家判18号120頁)
トルコへの子の返還申立に関する東京家決平成27・3・20の抗告審決定。原決定と異なり、トルコへの返還によって、子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐えがたい状況に置くこととなる重大な危険があると認め、原決定取消、申立却下。東京家決平成27・3・20(家判18号127頁)の抗告審。

3. その他の裁判例

- 東京地判令和元・10・9(平30(ワ)28211号、裁判所Web)
日本法人Xが、日本法人Yの有する各商標権について、Yに対し、買戻契約に基づき、商標権の移転登録請求。XのYに対する債務に関する代物弁済契約及び本件商標権に関する買戻契約の何れについても、準拠法を日本法とする旨の合意があったと認定。
- 東京地判令和元・6・18(平30(ワ)6575号、2019WLJPCA06188004)
Xが、プノンペン所在の外国法人Aの債務を主債務とするB(Aの代表取締役)の連帯保証債務につき、Y(Aの取締役)との間で連帯保証契約を締結した旨主張し、Yに対し保証債務等支払請求。何れの保証契約にも日本法指定の準拠法条項があったと認定。
- 東京地判令和元・5・31(金商1571号28頁)
X経営の企業グループの船舶を保有する各SPCと融資契約を締結していたYが、各SPCにつき会社更生手続開始の、Xにつき破産手続開始の申立を行ったところ、XがYに対し、不法行為等に基づき損害賠償等の支払を請求。各融資契約中、日本法を準拠法とする準拠法条項有。
- 東京高判令和元・5・8(平成30(ネ)5416号、LEX/DB25563299)
中国人と日本の農家との労働契約から生じた紛争。水戸地判平成30・11・9の控訴審判決。準拠法に関する判断なし。
- 東京地判平成31・3・25(平30(ワ)217号、D1-Law28273946)
戸籍法において、日本人同士の婚姻により配偶者の氏を民法上の氏として称する場合に、婚姻前の氏を戸籍法上の氏として称することが認められないことの違憲性が争われた事例。民法750条は日本人と外国人との婚姻に適用される規定ではないと判示。
- 知財高判平成31・3・4(平30(ネ)10065号、裁判所Web)
Xら(カリフォルニア法人・日本法人)が、Yら(デラウェア州法人2社、日本法人、シンガポール法人)に対し、特許権侵害の不存在確認等を請求した東京地判平成30・7・13の控訴審判決。主観的併合等により管轄が認められるも、訴えの利益がないと判示。
- 東京地判平成31・2・28(平28(ワ)38911号・平30(ワ)8383号、2019WLJPCA02288016)
亡B(韓国籍)が保有していた株式140株に関する死因贈与契約の有効性が争われた事例。Bの相続につき、韓国国際私法49条2項1号により常居所地法である日本法を指定した事実も窺われないとし、韓国法を適用(通則法36条)。
- 東京地判平成31・2・26(平28(ワ)44098号、2019WLJPCA02268029)
X(ドイツ法人)が、ハンブルクからジェッタまで船舶による荷物の運送をY(日本法人)に委託したところ、当該荷物が破損した為、国際海上物品運送法3条1項に基づき損害賠償請求。契約に関し準拠法合意があったとして日本法を適用(通則法7条)。
- 東京地判平成31・2・4(平29(ワ)14039号・平29(ワ)27436号、2019WLJPCA02048007)
保険診療報酬請求明細書(レセプト)の点検を行う日本法人Xが、システム開発業者の韓国法人Yと締結したレセプト点検システム開発委託契約に関する債務不履行に関する事例。日本法を準拠法とする明示の合意があったと判示。
- 東京地判平成31・1・25(平26(ワ)6340号・平26(ワ)6341号、D1-Law28271983)
損害保険会社であるX(日本法人)が、損害保険契約の締結に際し締結していた再保険契約に基づき、Y(日本法人)に対し、再保険金等の支払を求めた事例。元受保険契約、再保険契約の何れも準拠法は日本法とされている。
- 東京地判平成31・1・15(平29(行ウ)140号・ 484号、裁判所Web)
中国残留邦人等支援法2条1項1号にいう「同日において日本国民として本邦に本籍を有していたもの」の解釈が問題となった事例。昭和20年9月2日において、日本国民だっただけではなく、旧戸籍法に基づき本邦に本籍を有していた者と判示。
- 東京地判平成30・12・18(平29(ワ)28732号、D1-Law29051374)
X(ノルウェーで保険業を営むスペイン法人)が、A(ノルウェー法人)を売主としYを買主とする売買取引に基づく売買代金債権がXに譲渡されたと主張し、Yに対し売買残代金等の支払を請求。AY間の売買取引の成立を認め請求認容。準拠法の判断なし。
- 東京地判平成30・12・10(平30(ワ)14166号、D1-Law29051763)
韓国判決の我が国での執行が求められた事例。Yらは、Xによる支払督促申立てに対して異議を述べた上、通常訴訟において答弁書を提出しているから、Yらに対する手続保障に欠けることはない等として、民訴法118条の要件充足を認め請求認容。
- 東京高判平成30・12・5(平30(ネ)2456号、2018WLJPCA12056003)
Xらが、Yによるインターネット上の電子掲示板への投稿によって名誉を毀損されたとして、Yに対し、不法行為に基づき損害賠償を求めた事例。X1がシンガポールに居住していたものの、準拠法に関する判断なし。
- 東京地判平成30・11・30(平28(ワ)41418号、裁判所Web)
医療法人X(日本法人)が、医療用品等の小売業等を営むY(韓国法人)に対し、Yによる虚偽の事実が記載された通知書の送付により、医師3名が退職をして損害を被ったと主張し、不法行為に基づき損害賠償等請求。準拠法に関する判断なし。
- 水戸地判平成30・11・9(平27(ワ)390号、LEX/DB25561578)
技能実習生であるX1(中国国籍)が、茨城県内の監理団体であるY1を介して、実習実施機関で大葉栽培を営むY2との間で締結していた雇用契約に基づき、Y2に対し、大葉を束ねる作業に係る未払残業代1等の支払等を求めた事例。準拠法に関する判断なし。
- 東京地判平成30・10・24(平27(ワ)37037号、D1-Law29052118)
X(シンガポール法人)が、Yの夫Cに対し損害賠償請求権を有していたが、CのYに対する贈与でCが無資力になったとし、Yに対し、日本法又はシンガポール法に基づき当該贈与の取消等請求。贈与の事実が認められないとし、準拠法を判断せず請求棄却。
- 大阪高判平成30・10・23(平30(ネ)852号、同1553号)
大阪地判平成30・3・6の控訴審判決(上告棄却・上告申立不受理〔最決平成31・4・25〕)。準拠法については原判決維持。
- 東京高判平成30・10・10(平30(ネ)2047号、D1-Law28264844)
C(フィリピン国籍)の子でXが亡B(日本国籍)の子であるとして、Xが亡Bの子であることを認知するとの判決を求めた東京家判平成30・3・29の控訴審判決。管轄・準拠法を含め原判決維持。
+ 名古屋家豊橋支判平成30・10・2(平成30(家ホ)18号、親子関係不存在確認事件)(2019-12嶋)
- 東京高判平成30・8・23(判時2391号14頁)
インターネット上の広告業務等を目的とするX(日本法人)が、インターネット上の検索サイトを管理運営するY(米国法人)に対し、日本向け検索サービスにおける検索結果の削除請求。原判決(東京地判平成30・1・31)同様、準拠法を論じることなく日本法を適用。
- 東京地判平成30・8・10(平29(ワ)20696号、2018WLJPCA08108006)
Xらが、貸金業者である日本法人A及びB乃至順次合併等によりBの権利義務を承継してきた会社の最終承継者Yに対し、借入れに対する弁済金の過払金につき不当利得返還請求。AとBとの資産譲渡契約につき、日本法を準拠法とする条項の存在を認定。
- 東京地判平成30・6・22(平28(ワ)43704号・平29(ワ)8956号・平29(ワ)15350号、2018WLJPCA06228013)
特殊浴場の経営等を行う会社(日本法人)の株式を所有していたIの死亡後になされた株式譲渡の有効性等が争われた事例。遺産分割協議の成立につき、故Iの本国法である韓国法に従い判断(通則法36条)。
- 東京地判平成30・5・29(平29(ワ)34961号、2018WLJPCA05298002)
XがYに対し、韓国裁判所がYに対しXへの損害賠償金の支払を命じた各判決について、民執法24条に基づき、執行判決を求めた事例。年20%の割合による金員の支払を命ずる部分が公序違反(民訴法118条3号)だとは言えないとして、請求認容。
東京地判平成30・5・9(平28(ワ)41036号、2018WLJPCA05098010)
マーシャル諸島法人Xが、定期傭船契約を締結していたY(日本法人)の民事再生手続において、届け出た債権の一部の支払等を請求。返船時の残存燃料の取扱いにつき、同契約の意思解釈又は慣習に基づき判断し、準拠法は結論を左右しないと判示。
+ 東京高決平成30・4・19(判時2403号58頁)(2019-12 岩本)
国外に居住する配偶者からの婚姻費用分担請求
- 東京地判平成30・3・27(平29(ワ)359号、LEX/DB25552741)
Xが、イスタンブールでのクレジットカード使用に関し、上記クレジット決済(立替払い契約)は詐欺・強迫等によるものだとして、クレジットカード発行会社被告Y(日本法人)に対し、不当利得返還等請求。本件カード取引の準拠法が日本法であるとの言及有。
+ 知財高判平成30・2・7(判時2371号99頁)(2019-05 種村)
対象商標につき商標権を有するXが、商品に関する広告に標章を付して頒布するYの行為が商標権侵害であると主張して、Yに対し、商標法36条1・2項に基づきYの商品の販売・頒布の差止・廃棄を請求。被疑侵害行為は当該商標権侵害の実質的違法性を欠くとして請求棄却。
- 東京家審平成29・12・8(判時2403号61頁)(抗告審は報告済み)
(抗告審は、東京高決平成30・4・19(判時2403号58頁))
+ 大阪高判平成29・9・1(2017WLJPCA09016006)
最判平成31・1・18(民集73巻1号1頁)の二審判決
- 大阪高決平成29・7・12(判時2388号22頁)
米国への子の返還請求に関する大阪家決平成29・4・26の抗告審決定。原決定同様、子の常居所地国が米国であるとし、返還拒否事由もないとして抗告棄却。
- 大阪家決平成29・4・26(判時2388号25頁)
子(日米二重国籍)の父X(米国国籍)が、母Y(日本国籍)に対し、米国への子の返還を求めた事例。生後7箇月である子の常居所地国を判断するに当たっては監護者の意思が重要な要素となるとし、子の常居所地国を米国とし、返還拒否事由もないとして、申立認容。
- 東京高判平成29・3・29(平28(ネ)5169号、2017WLJPCA03296027)
Y1運転、Y2社保有の自動車がX運転の自動車に追突した事故により生じたXの人身被害につき、XがYらに対し損害賠償等を請求。住所・主たる事務所により管轄肯定(民訴法3条の2第1項・3項)。不法行為の結果発生地として日本法を適用(通則法17条)。
+ 大坂地判平成28・11・30(2016WLJPCA11306028)
最判平成31・1・18(民集73巻1号1頁)の一審判決
- 大阪家決平成28・11・29(家判19号87頁)
子(日豪の二重国籍)の父Xが、母Yに対し、子を常居所地国であるオーストラリアに返還するよう求めた事例。Xが、内心では不満を持っていたにせよ、Yに対し、Yと子の日本滞在について同意を与えていたとして、申立却下(実施法28条1項3号)。
- 大阪家決平成28・6・7(判時2395号78頁)
子(日本とアルジェリアの二重国籍、11歳11箇月)の父X(アルジェリア国籍)が、母Y(日本国籍)に対し、常居所地国であるフランスへの子の返還を求めた事例。フランスへの返還を拒む子の意見を考慮することが適当であるとして、申立却下(実施法28条1項5号)。大阪高決平成28・8・29(判時2395号75頁)の原審。
- 大阪家決平成28・3・31(家判18号109頁)
父X(シンガポール国籍)が母Y(インド国籍)に対し、子(英国籍)のシンガポールへの返還を請求。Xが有していた「共同監護権」は実施法27条3号に定める「監護の権利」には該らず、シンガポール裁判所も「監護の権利」を有さなかったとして、申立却下。
- 東京家決平成27・3・20(家判18号127頁)
子の父X(トルコ国籍)が母Y(日本国籍)に対し、子のトルコへの返還を求めた事例。返還によりこの心身に害悪を及ぼすことその他子を耐えがたい状況に置くこととなる重大な危険(実施法28条1項4号)があると認めることは出来ないとして、申立認容。東京高決平成27・7・14(家判18号120頁)の原審。

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