平成29年度の国際私法に関連する主な裁判例

(冒頭の + は渉外判例研究会で報告済み又は報告予定の裁判であることを示す。)

 平成29年度重要判例解説(有斐閣)のために横溝大教授(名古屋大学)が集めた国際私法関連の裁判例を、同書に重要判例として掲載したもの、それに準ずる重要性を有するもの、その他に分け、各項目ごとに裁判年月日の新しいものを先に記載した。各裁判例の紹介も横溝大教授(名古屋大学)による。前後の年度のリストもあわせて参考にされたい。

1. 平成29年度重要判例解説掲載の裁判例

- 最決平成29・5・17(平28(許)49号、判時2345号70頁、判タ1439号75頁
中国に居住していた日本人Aの子であるXらが、その子らに係る戸籍法104条1項所定の国籍留保の届出等をYにしたところ、Yからこれらを受理しない旨の処分を受けたため、同法121条に基づき、Yに上記届出等の受理を命ずることを申し立てた事例。戸籍法104条1項にいう「『責めに帰することができない事由』の存否は、客観的にみて国籍留保の届出をすることの障害となる事情の有無やその程度を勘案して判断するのが相当である」とし、「Xら4名について、戸籍に記載されておらず、本籍及び戸籍上の氏名がないという事情だけでは、客観的にみて本件子らに係る国籍留保の届出をすることの障害とならないことは明らか」として抗告棄却。
+ 東京地判平成28・11・30(判タ1438号186頁)(2017-10 酒井)
米国に本社を置く通信社である被告Yらの運営するインターネットウェブサイト上に、原告Xが東京の高級住宅街に新居を建設していること、その所在地や用地取得及び完成時期、近隣関係、これに要した費用額、用地の広さ及び設計上の特徴等に関わる記事や、上記建物の建設現場の写真・映像が掲載されたことにより、Xのプライバシー権並びに同人及び同人が代表者を務める原告X2社の名誉権が侵害されたなどと主張するXらが、Yらに対し、共同不法行為に基づく損害賠償として、それぞれ1100万円及び遅延損害金の連帯支払を求めるとともに、人格権に基づき、上記記事及び動画の削除を求めた事例。客観的事実説に基づく不法行為地管轄、及び、客観的併合により管轄肯定。名誉棄損については通則法19条、プライバシー権侵害については17条により日本法を適用。
+ 大阪高判平成28・11・18(判時2329号45頁)(2018-03 竹下)
亡A(韓国国籍)と被告・被控訴人Y(韓国国籍)との婚姻につき、Aの子らである原告・控訴人Xら(何れも韓国国籍)が、Yに対し、Aについての届出意思の欠缺を理由に無効確認等を求めた事例。前提事実から日本の国際裁判管轄を肯定。届出意思を「婚姻の方式」として、通則法24条2項に依り婚姻挙行地法である日本法を選択・適用。届出の追認につき、婚姻の方式の準拠法である日本法でも婚姻の成立についての準拠法である韓国法でも、追認が認められるとした。
- 東京地判平成28・10・6(平27(ワ)9337号、金商1515号42頁)
日本法人である原告が、ミシガン州に本店を置く米国法人である被告Y1及びY1が設立した特別目的会社であるY2(ミシガン州に本店を置く米国法人)との間で締結した、太陽電池グレードポリシリコンに係る4件の長期供給契約につき、供給者であるYらが、優越的地位を利用して、原告に一方的に不利益な契約条件を設定して応諾させたものであると主張して、Yらに対し、独禁法24条・19条・2条9項5号ハに基づき、本件各契約のうちXに不利益な契約条項の削除及び本件製品の購入要求の差止めを求めると共に、民法709条に基づき損害賠償等を求めた事例。ミシガン州裁判所を指定した専属管轄合意の有効性が問題となった。裁判所は、「一定の訴訟事件について、日本の絶対的強行法規の適用を排斥する結果を生じさせる国際的専属裁判管轄の合意が『はなはだしく不合理で公序法に違反する』と解し、かつ、日本の独禁法が絶対的強行法規に当たると解する立場をとるとしても、そのような理由により当該合意が無効となるのは、単に当該合意における専属管轄裁判所において、日本の独禁法が適用されないというだけではなく、当該訴訟で主張される事実について、当該専属管轄裁判所が準拠する全規範を適用した場合の具体的な適用結果が、日本の裁判所が準拠する独禁法を含む全ての関連法規範を適用した場合の具体的な適用結果との比較において、独禁法に係る我が国の公序維持の観点からみて容認し難いほど乖離したものとなるような場合に限られると解するのが相当である」とし、合意の有効性を認め訴えを却下した。
+ 東京地判平成28・9・26(平成25年(ワ)第10780号、平成25年(ワ)第14177号、LEX/DB 25543877、2016WLJPCA09268020)(2017-03 神前)
英国LPとそこで雇用されていたブローカーとの間の雇用更新拒絶に関する紛争。契約準拠法は英国法であるものの、通則法12条1項・2項により最密接関係地が日本であるとして、労働契約法19条等につき判断。
+ 東京高判平成27・9・24(判時2306号68頁、LEX/DB 25544251)(2017−05 中村)
加州において日本語の翻訳文を付さない直接送達の形で訴状が送達された加州判決の我が国での執行が問題となった事例。一審判決である東京地判平成26・12・10と異なり、翻訳がなかった事実を考慮しても、現実に訴訟手続の開始を知ることができ、かつ、その防御権の行使に支障がない手続であったとして、民訴法118条2号の要件を充たすとして原判決取消。

2. 重要性の高い裁判例

+ 東京高判平成29・10・25(平27(ネ)5514号、D1-Law28254852)(2018−10 藤澤)
日本法人である原告が、ミシガン州に本店を置く米国法人である被告Y1及びY1が設立した特別目的会社であるY2(ミシガン州に本店を置く米国法人)との間で締結した、太陽電池グレードポリシリコンに係る4件の長期供給契約につき、供給者であるYらが、優越的地位を利用して、原告に一方的に不利益な契約条件を設定して応諾させたものであると主張して、Yらに対し、独禁法24条・19条・2条9項5号ハに基づき、本件各契約のうちXに不利益な契約条項の削除及び本件製品の購入要求の差止めを求めると共に、民法709条に基づき損害賠償等を求めた事例である東京地判平成28・10・6の控訴審判決。独禁法24条に基づく請求権が民事的救済手段であることも鑑みつつ、「当該訴訟で主張される事実について、当該専属管轄裁判所が準拠する全ての関連法規範を適用した場合の具体的な適用結果が、日本の裁判所が準拠する独禁法を含む全ての関連法規範を適用した場合の具体的な適用結果との比較において、独禁法に係る日本の公序維持の観点からみて容認し難いほど乖離したものとなるような場合に限られる」という原判決の判断枠組を維持し、控訴棄却。
- 東京高判平成29・6・29(平29(ネ)709号、2017WLJPCA06296007)
東京地判平成29・1・13の控訴審判決(35名中20名の控訴)。原判決支持。Xらは消費者契約に関する通則法11条2項により法人格否認の法理の適用を主張。同法理は、具体的な事案の下で、形式上の法人格とその実体をなす個人又は別法人を同一視して法律関係を捉えることを内容とするものであって、実定法上の根拠を一般条項に求めたものにすぎないから、民法1条を根拠とするからといって、それ故に同法理が直ちに強行法規性を帯びるものではないとした。
- 東京高判平成29・4・18(訟月63巻10号2175頁)
日本人父とロシア人母の子である原告らが、ロシア国籍を取得する手続きによる同国籍を取得したため、国籍法11条1項により日本国籍を喪失する惧れがあるところ、同規定は適用されないとして、日本国籍確認請求を行った事例である東京地判平成28・6・24の控訴審判決。未成年者である日本国民の法定代理人の申請によりその未成年者が外国の国籍を取得したときも、同項の「自己の志望」による外国の国籍の取得に当たると解した上で、Xらは、実効性のあるロシア国籍を直接かつ積極的に希望する意思を以て本件手続を行ったとして控訴棄却。
+ 東京高判平成29・3・29(平28(ネ)4618号、2017WLJPCA03296012)(2018-10小池)
恐らく東京地判平成28・6・30の控訴審判決。日本に輸入されたロシア産の冷凍ボイルタラバガニ肉についての占有移転禁止の仮処分等に関連する一連の訴訟。原判決が一部の売買契約の準拠法を黙示の合意によりロシア法としたのに対し、黙示の合意を否定した上で、「本件オーシャン売買の契約書を精査しても、ボスホードとYとの間で契約準拠法をロシア法又は日本法とする明示の合意があったとも黙示の合意があったとも認めるに足りる証拠はないところ,ボスホードとYは、営業所がそれぞれロシアと日本という異なる国に所在し、ロシア及び日本がいずれも締約国であって(第1条(1)(a))、その目的物であるカニ肉が適用除外を定める第2条のいずれにも当たらず,その売買が「物品を製造し,又は生産して供給する契約」(第3条(1))に当たる上,契約書において同条約の適用を排除する定めは見当たらない(第6条)から,同条約が適用されるというべきである。」として、ウィーン売買条約の適用を認めた。
- 那覇地沖縄支判平成29・2・9(平24(ワ)422号・平28(ワ)190号、LEX/DB25545116)
嘉手納飛行場の周辺に居住する原告らが、被告である米国に対し、同飛行場における航空機の夜間離発着禁止及び損害賠償を求めた事例。対外国民事裁判権法3条に依拠しつつ、受入国の同意に基づき同国に駐留する外国の軍隊の主権的な行為につき裁判権免除を与えるという限度で国際慣習法が存在することは明らかであるとして、訴え却下。
+ 東京高判平成28・12・12(平28(ネ)2998号、判時2349号18頁、D1-Law29018440)(2018-03 嶋)
東京地判平成28・5・23の控訴審判決。「貸金業法は、「貸金業」を、「金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介で業として行うものをいう」(2条1項本文)と定義した上、貸金業を営もうとする者には都道府県知事の登録を受けることを求め(3条1項)、無登録営業を罰則をもって禁止している(11条1項、47条2号)ところ、日本国内において金銭の貸付けの一部を業として行っている限り、顧客が国外の借主のみであっても、「貸金業を営」むこと(3条1項)に該当するものと解するのが相当であり、このように解することは、日本国内における貸付行為をもって貸金業法の適用対象ととらえる考え方(属地主義)にも抵触しないというべきである。そうすると、1審原告は、日本国内に本店を有し、日本国内において金銭の貸付けの一部である送金行為を業として行っているのであるから、貸金業法にいうところの「貸金業を営」んでいるものというべきである」と判示。
- 大阪高決平成28・9・16(判時2342号30頁・判タ1439号114頁)
神戸家審平成28・3・30の抗告審。C国籍を有する抗告人が、C国籍の女性とC国総領事館内において同国の方式により婚姻したとして、B区長に対し、C国政府作成の婚姻関係証明書を添付した婚姻届出を提出したところ、戸籍法の適用がないとの理由により不受理とされ、不服申立てをしたが却下されたので即時抗告。戸籍法41条は、外国に在住する日本人の身分関係の変動を戸籍に反映させるための規定であり、戸籍を作ることが予定されていない在留外国人に類推すべき規定とは言えないとして抗告棄却。
- 東京高決平成28・8・19(平28(ラ)497号、2016WLJPCA08196002)
日本商事仲裁協会の仲裁判断につき取消しが求められた事例。仲裁廷による本件契約の解釈がEU競争法等の強行法規に違反するものであったとしても、その適用結果が仲裁法44条1項8号にいう日本の公序に反することにはならない等として抗告棄却。原判決は東京地決平成28・2・17(平27(仲)4号、2016WLJPCA02176008)。
- 東京地判平成28・8・16(判時2327号50頁)
韓国籍を有し日本において特別永住者の資格を有していた亡Eの妻である原告X1、子である原告X2及び原告X3が、Eの他の子である被告Yらを相手方として、Eを被相続人とする相続についてのXYらの法定相続分が韓国民法の規定による割合ではなく日本民法の割合であることの確認を求めた事例。本件相続は被相続人の本国法である韓国法(通則法36条)により規律されるべきであり、本件相続に韓国民法の法定相続分割合の規定を適用することが公序に反するということは出来ないと判示。
- 東京地判平成28・7・14(平28(レ)247号、2016WLJPCA07148030)
中国上海市所在の日本人学校の小学2年生であった原告・控訴人Xの子につき同校で実施する英語検定試験の申込みを希望したところ、同校から申込みを受け付けるのは小学3年生以上であり他の会場で受験してほしい旨回答されたXが、精神的苦痛を被ったとして、同校校長である被告・被控訴人Y1及び試験実施全体の責任者であるとXが主張する別の日本人学校校長である被告・被控訴人Y2に対し、共同不法行為に基づく損害賠償の一部請求として、慰謝料60万円の連帯支払を求めた事例。差押可能財産の日本への所在(民訴法3条の3第3号)や民訴法3条の6の要件が充足されるとしたものの、日本との関連性の希薄さ等を理由に特別の事情があるとして我が国の国際裁判管轄を否定。
- 東京地判平成28・5・23(平28(ネ)2998号、D1-Law28250101)
海外における消費者金融ビジネスへの投資、金融商品取引法に定める第二種金融商品取引業等を目的とする合同会社である日本法人原告Xが、関東財務局長が、貸金業法の解釈適用を誤り、事業が貸金業の無登録営業に該当しないにもかかわらず、これに該当するものとして報告命令等を行ったとして、国を被告として、国賠法1条に基づき損害賠償を請求した事例。「貸金業を営む者の業務の適正な運営の確保という観点からすれば、貸金業を営む者が国内で活動を行っている以上、貸付けの相手方が国外の資金需要者に限られるとしても、その適用を排除する理由とはならない」と判示。
- 神戸家審平成28・3・30(平27(家)710号、2016WLJPCA03306015)
C国籍で日本に在住する男性である申立人が、C国籍の女性とC国総領事館内においてC国法の方式により婚姻し、その後B区長に対し、C国政府が作成した婚姻関係証明書を添付して婚姻の報告的届出をしたが、戸籍法の適用がないとの理由により不受理とされたため、不服申立て。婚姻の報告的届出に関する戸籍法41条1項は、外国に在住する日本人を対象とする規定であり、外国人には類推適用されないとして申立却下。

3. その他の裁判例

- 東京高判平成29・9・21(平28(ネ)2739号、D1-Law28253913)
オマーン法人Aを被保険者とする保険会社との間の再保険契約に基づき再保険金をそれぞれ支払った仏独瑞英の保険会社であるXらが,日本法人であるYに対し、Aによるオマーン国内でのメタノール精製プラント建設に参画したYには同プラント設計に関する注意義務に違反してAに損害を被らせた不法行為があると主張して、Aから代位取得したとしてYに対し不法行為による損害賠償請求を行った東京地判平成28・4・21の控訴審判決。通則法22条1項により累積適用される日本法上不法行為の要件を充足しないとして、控訴棄却。
+ 東京地判平成29・8・30(平成29(ヨ)1552号、LEX/DB 25547114)(2018-07 羽賀)
歯科医院を運営する医療法人社団である債権者が、「Googleマップ」を管理・運営する法人である債務者に対し、本件サイトに書き込まれた記事により債権者の名誉権が侵害されていると主張し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロ責法)4条1項に基づく発信者情報開示請求権を被保全権利として投稿記事に関する情報の開示を求めた事例。名誉を棄損された被害者の常居所地法として日本法を適用(通則法19条)。
+ 東京地判平成29・7・27(平成28(ワ)25969号)(2017-12 的場)
原告X(日本法人)が、被告Y(カナダ法人)に対し、米国特許権侵害による損害賠償請求権を有しないことの確認を求めた事例。特許権侵害に関し別件米国訴訟で不法行為として主張されている対象行為が米国内におけるXの行為であることから不法行為地管轄は認められず、また、消極的確認訴訟において財産所在地管轄に関する民訴法3条の3第3号の「被告」を「原告」に読み替えることは出来ないとして、訴え却下。
- 東京地判平成29・7・12(平28(ワ)35978号、裁判所Web)
原告X(日本法人)が、光配向用偏光光照射装置に関する情報を取得した上、Xを相手方とする訴訟及び保全事件において本件各文書を証拠又は疎明資料として裁判所に提出した被告Y(日本法人)に対し、Yの上記行為が不正競争防止法2条1項8号所定の不正競争に該当する旨主張して、本件情報の使用及び開示の差止等を求めた事例。不競法に基づく差止請求権の準拠法につきXは日本法を、Yは中国法を主張していたものの、裁判所は、Yの行為が不競法2条1項8号所定の不正競争に該当するかについて直截判断し、上述の点について判示しなかった。
+ 東京高判平成29・5・18(平28(ネ)4041号、2017WLJPCA05186002)(2017-12 岩本)
東京地判平成28・7・13の控訴審判決。「確定した執行決定のある仲裁判断」は、文理上も民執法35条1項後段にいう「裁判以外の債務名義」には該当しないし、仲裁判断成立の瑕疵は執行決定を求める猛威縦の手続において争うことが出来、執行決定に対して即時抗告をすることも出来るのであるから、同規定の趣旨からしても、請求異議訴訟において、「確定した執行決定のある仲裁判断」の成立についての異議を主張することは許されないとして、控訴棄却。
- 東京地判平成29・4・27(平27(ワ)4282号・平27(ワ)21694号・平27(ワ)24171号・平27(ワ)28335号・平28(ワ)23032号、2017WLJPCA04276002)
我が国及び米国に居住する原告らが、新聞社である日本法人に対し、従軍慰安婦に関する記事の掲載により名誉を棄損されまた損害を受けたと主張して、謝罪広告及び損害賠償を求めた事例。米国居住の原告らの請求については米国法が準拠法となるとしつつも(通則法17条及び19条)、日本法上不法行為を構成しないとして(通則法22条1項)請求棄却。
- 東京地判平成29・1・25(平成28(ワ)7339号、LEX/DB25545208)
フィリピン法人の銀行であある被告との間で雇用契約を締結し日本での業務を統括する支店で稼働し,その後退職した原告が,被告に対し,退職金及び遅延損害金の支払を求めた事例。請求棄却。準拠法に関する判断なし。
- 東京地判平成29・1・31(平成28(ワ)33524号、LEX/DB25538954)
日本国内の投資家向けに販売した米国での診療報酬債権(MARS)を投資対象とする金融商品について、米国法人Yと締結した出資契約の取消しと不当利得返還をXらが求めた事例。改正民訴法施行日である平成24年4月1日以降に締結された出資契約については民訴法3条の7第5項により、また、同日以前に締結されたものについては、本件記入商品の運用や勧誘の状況等から、本件管轄条項の存在を以てXらが我が国の裁判所において審理を求める方法を絶つことが甚だしく不合理であり、公序法に反するとして、管轄合意条項の効力を認めず、米国クラスアクション訴訟におけるYの主張とXらによる本件訴え提起により、日本の裁判所を管轄裁判所とする旨の合意の成立、及び、民訴法3条の4第1項により、管轄肯定。通則法7条によりネヴァダ州法、又は、11条により消費者契約法を適用。
- 知財高判平成29・1・25(平28(ネ)10020号・平28(ネ)10044号、裁判所Web, 2017WLJPCA01259001)
LGDisplayと大林精工間の訴訟の一つ。無償で特許権又は特許を受ける権利を譲渡する契約が当事者間に存在するとして、韓国法人が日本法人等に対し移転登記請求。本件合意書の準拠法条項に基づき韓国法を適用し(附則3条3項、法例7条)、契約の成立を否定。
- 東京地判平成29・1・24(平28(行ウ)597号、LEX/DB 25538435)
Xが、国会議員であるCが日本と外国の国籍を有する重国籍の状態にあるにも拘らず、歴代の法務大臣がC議員に対する国籍法15条1項所定の国籍の選択の催告を怠ったため、外国の諜報員である可能性のあるC議員が国会議員になり、日本国民の幸福を追求する権利が侵害された等と主張して、行訴法3条6項1号所定の所謂非申請型の義務付けの訴えとして、C議員の日本国籍を廃することの義務付けを求めた事例。国籍法は、法務大臣による国籍の選択の催告を経ずに、法務大臣乃至国が重国籍の状態にある日本国民の日本国籍を直接に廃することを認めているものではなく、法務大臣にそのような権限が付与されているものではないというべきであり、他にそのような公権力の行使やその権限を認める根拠となる法令の規定は存在しないとし、また、国籍法15条所定の国籍の選択の催告と日本国籍の喪失に係る制度は、重国籍者以外の個々の国民の個別的利益を保護する趣旨のものとして設けられたものではないと解されるとして、不適法として訴え却下。
- 東京地判平成29・1・24(平25(行ウ)39号、LEX/DB 25538514)
米国において不動産に係る事業を営む米国ワシントン州法に基づき設立されたリミテッド・パートナーシップ(LPS)の持ち分を取得した原告Xが、当該事業により生じた損益のうちXに割り当てられたものをXの不動産所得の金額の計算上収入金額又は必要経費に算入して所得税の申告をしたところ、更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を受けたことから、上記各処分の取消しを求めた事例。最判平成27・7・17の判断枠組に従い、本件各LPSにつき、権利義務の帰属主体と認められることから我が国租税法上の法人に該当すると判示。
- 東京地判平成29・1・19(平28(ワ)29349号、LEX/DB 25538330)
Yとの間で締結した出資契約の取消しをXらが求めた事例。ネヴァダ州でのクラスアクションで暮らす認証がされれば、脱退をしない限り、別件クラスアクションの効力が及ぶことを根拠に、別件クラスアクションでの日本の裁判所の管轄に同意している旨のYの主張を、本件訴訟について日本の裁判所を管轄裁判所とする付加的管轄合意の申入れと評価し、Xらによる本件訴えの提起をその承諾と評価して、日本の裁判所を管轄裁判所とする付加的管轄合意の成立を認めた。契約準拠法としてネヴァダ州法を適用。
- 東京地判平成29・1・17(平28(ワ)31585号、LEX/DB 25538647)
日本国内の投資家向けに販売した米国での診療報酬債権(MARS)を投資対象とする金融商品について、米国法人Yと締結した出資契約の取消しと不当利得返還をXらが求めた事例。ネヴァダ州でのクラスアクション訴訟における「本件においては、Yは日本の裁判所の管轄に同意」しているというYの主張とXの本訴提起により、出資契約中の管轄合意を排除する合意が有効に成立したとし、消費者契約に関する民訴法3条の4第1項により管轄肯定。通則法11条1項により民法96条1項及び消費者契約法4条1項1号を適用。
+ 東京地判平成29・1・13(平成25年(ワ)19090号、LEX/DB 25538545、2017WLJPCA01136014)(2017-12 小池)
原告Xらが、それぞれ、被告株式会社Y1(日本法人)が募集型企画旅行として企画・実施した船舶による旅行に参加した際、船舶が洋上でエンジンを停止して旅行の一部に支障が生じたことにつき、主位的には、Y1及び船舶の所有会社A(パナマ法人)の親会社である被告Y2(香港に本店を置く法人)に対し、損害賠償金及び遅延損害金の連帯支払を求め、予備的には、被告Y1に対し、旅行契約中の宿泊設備等に関する旅程保証特約に基づき、変更補償金及び遅延損害金の支払を求めた事例。債務履行地が日本にあるとして管轄肯定(民訴法3条の3第1号)。法人格否認の法理の適用の有無の判断はXらとAとの間に締結された運送契約の準拠法によるべきであるとし、英国法によりこれを否定。
- 東京地判平成28・12・27(平27(ワ)7328号、2016WLJPCA12278003)
原告Xらが、被告Yに対し、Yの配偶者でありXらの父であったA(中国出生、帰化)の遺言により、主位的に、遺言執行者又は受託者たるYにAの債務全額の弁済義務があると主張し、①Aの債務のうちX2が立替払いをした立替金の支払、②AのB銀行からの借入金返還債務及びC公庫からの借入金返還債務を負っていることの確認を求め、予備的に、YがAの配偶者としてその債務の2分の1を承継したとして、不当利得に基づき、上記立替金の2分の1に当たる金額の支払を求めた事例。遺言の解釈に関する準拠法につき、通則法の規定振りから、通則法37条に従い被相続人の本国法である日本法を選択・適用。
- 東京地判平成28・12・22(平成24(行ウ)846号、平成25(行ウ)53号、平成25(行ウ)258号、裁判所Web)
米国で不動産に係る事業を営むワシントン州法に基づき設立されたリミテッド・パートナーシップの租税法法の取扱いが問題となった事例。最判平成27年7月17日の枠組に依拠し、所得税法2条1項7号等に定める外国法人に該当すると判示。
- 東京地判平成28・12・21(平27(ワ)1986号、2016WLJPCA12218035)
韓国国籍を有する被相続人Aに係る相続の推定相続人である原告X及び被告Yら2名の3者間において、Xが、被告Y2はその相続分を放棄し、又はこれをXに譲渡し、もって、その相続分を失ったと主張して、Yらに対し、Y2が相続分を有しないことの確認を求めた事例。韓国法を適用し(通則法36条)、相続分の放棄は認められないとして請求棄却。
- 水戸家審平成28・12・16(平28(家ホ)10号、判タ1439号251頁)
日本に国籍・住所を有する男性である原告が、韓国に国籍・住所を有する被告(入国管理局において原告との偽装結婚を見破られ、日本から退去強制された)に対し、婚姻無効確認請求。平成8年最高裁判決に従い諸事情から日本との密接関連性を認め管轄肯定。婚姻意思を一方要件とし、原告に対し適用される日本法(通則法24条1項)742条1号により本件婚姻が全体として無効であるとした。
- 東京地決平成28・12・9(金商1515号36頁)
台湾法人である申立人Xが、再生手続開始決定を受け、民事再生法49条1項に基づきXとの代理店契約を解除した日本法人である相手方Yに対し、違約金及び損害賠償金につき債権査定申立てを行った事例。再生手続地法である日本の民事再生法の適用を前提とした判断。
+ 東京高判平成28・11・30(平成28年(ネ)第3501号)(2017-03 草間)
東京地判平成28・6・20(平成24年(ワ)第29003号、2016WLJPCA06208005)(平成28年度リスト掲載)の控訴審
- 東京高判平成28・11・24(平28(ネ)2098号・3139号、LEX/DB25544729)
原告・被控訴人X(中国人)が鞄の製造・卸を手掛ける控訴人Y(日本法人)に対し、YがしたXに対する解雇の意思表示につき、Xの妊娠を理由とするものであって、雇用機会均等法9条3・4項により無効である等と主張して、雇用契約上の地位を有することの確認及び賃金等の支払を求めた事例(控訴審において慰謝料請求も追加)。労働契約にき、「当事者による準拠法の選択はなく、法の適用に関する通則法8条1項により、最密接関連地法が適用されるところ、労務提供地は日本であるから、労務提供地法である日本法が最密接関連地法と推定され(同法12条)、日本法が適用され」ると判示。不法行為についても、同法17条により、日本法が適用されるとした。
- 横浜地判平成28・11・16(平26(ワ)5011号、D1-Law28253066)
香港法人である原告Xが、日本法人である被告Y1及び訴外Aとの間で締結した業務委託提携契約につき、Yらが違反行為をしたとして、Y1及びその代表者であるY2に対しては、上記違反行為により生じた損害につき締結した覚書に基づき損害賠償金を、Y2の妻であるY3に対しては共同不法行為に基づく損賠賠償金等の支払いを求めた事例。Yらの主たる事務所或いは住所が日本にあることから管轄肯定。Xの当事者能力の準拠法につき、設立準拠法である香港法を選択。覚書の有効性を判断する準拠法として、当事者による黙示的選択或いは最密接関係地法として日本法を選択(通則法7条・8条1項2項)。共同不法行為の準拠法として、結果発生地又は明らかにより密接な関係がある地として日本法を選択(通則法17条、20条)。
- 東京地判平成28・10・26(平28(ワ)5502号、2016WLJPCA10268020)
亡Aの子であるXら(韓国国籍)が、Xらが共有持分を有しており亡Aが売却した韓国所在の土地建物につき、亡Aの後妻であるY(韓国国籍)に対し、共有持分相当額等の支払を求めた事例。相続については亡Aの遺言を理由に日本法を選択。本件土地建物の所有権の帰属が論じられているが、準拠法に関する判断なし。X・亡A間の委任契約については(理由なく)日本法が適用されている。
- 東京地判平成28・10・19(平26(ワ)2823号、2016WLJPCA10198016)
台湾戸籍に登録されていた被相続人Aの相続人である原告X(日本に帰化)が、同相続人である被告Yらに対し、XとYらとの間の遺産分割協議書に基づくAの相続財産についての合意は、通謀虚偽表示により無効であり、又は錯誤により取り消されたものであるとして、同合意が無効であることの確認を求めるとともに、それを前提に、Y2に対し所有権一部移転登記手続を、Y1に対し不当利得に基づき金員の支払を求めた事例。X、Y2、Y5、Y3、Y4が日本に居住し、X、Y2、Y3、Y4が日本国籍を有すること、本件が日本にあるAの財産についてされた本件分割協議の効力に関する紛争であることから国際裁判管轄を肯定。Aの相続に関する法律関係につき、通則法36条を適用、38条3項を準用し、台湾民法を適用。
- 東京地判平成28・9・23(平25(ワ)9995号、2016WLJPCA09238006)
ケイマン法に基づいて組成された有限責任組合(limited Partnership)の業務執行組合員(General Partner)であった原告が、被告らとの間の出資契約上の出資義務を被告らが履行しなかったことによって、被告らが出資義務を履行していれば原告が業務執行組合員として得られたはずの報酬相当額の損害を被ったと主張し、被告らに対し、出資契約の債務不履行、又はケイマン法上の信認義務(Fiduciary duty)違反に基づく損害賠償等の支払を求めた事例。(恐らく通則法7条により)ケイマン法を選択・適用。
- 東京地判平成28・9・7(平27(行ウ)639号、2016WLJPCA09078002)
ベトナム人男性である原告Xが、東京入国管理局から退去強制令書発付処分を受けたことにつき、Xが永住者の在留資格をもって本邦に在留する外国人女性Dと婚姻をしていること等から、当該発付処分に違法がある等の主張をし、その取消しを求めた事例。Dの子につき、DがXとの婚姻前に離婚した日本人の嫡出子と推定されることにつき、通則法28条1項及び同規定により選択された日本民法772条が言及されている。
- 大阪高決平成28・8・31(判タ1435号169頁)
中国人女性である元妻の申立人が、日本人男性であり離婚後の子らの親権者である元夫の相手方に対し、子らに対する面接交流を求めた大阪家審平成28・3・17の抗告審。管轄・準拠法に関する判断については原審判維持。
- 東京高判平成28・8・30(平27(ネ)6373号、D1-Law28243359)
イタリア人男性から元妻の父である日本人男性に対する子の引渡請求に関する静岡家浜松支判平成27・12・2の控訴審判決。通則法32条の常居所地が日本であるとして日本法を選択した原判決を維持。
- 東京地判平成28・8・26(平25(ワ)13496号、2016WLJPCA08268014)
海運会社である原告X(シンガポール法人)は、訴外Aとの間で船舶の新造船建造契約を締結した。Aは被告X1に対し本件船舶の建造を発注し、X1は、本件船舶のタンクの塗料について製造・供給を被告X2に、塗装作業を被告X3にそれぞれ発注した。本件は、本件船舶の完成引渡後、Xが本件船舶のタンクに訴外Bらから預かった植物油を積んで運送したところ,同植物油に同タンク内部の塗料が溶出して損害を受けたと主張して、主位的に民法709条、715条及び719条に基づき、予備的に不真正連帯債務者間の求償権に基づき、Bらがロンドンで申し立てた仲裁手続で支払うことになる損害金、金利損、仲裁手続費用並びにX自身が被る損害等の賠償金の支払を求めた事例。準拠法に関する判断はないが、当事者間の事後的合意に準拠法が日本法となる旨の条項が含まれていた。
- 東京地判平成28・8・10(平27(ワ)19890号、2016WLJPCA08108017)
原告が、被告(韓国人)に対し、弁済期を定めず、30日ごとに利息を支払うものと合意し、500万円を貸し付けたと主張して、当該金銭消費貸借契約に基づく貸金返還請求権として、500万円と利息、及び遅延損害金の支払を求めた事例。「本件書類[借用証書及び領収証]に係る原告と被告との間の法律関係については、日本民法が適用される(法の適用に関する通則法7条,8条1項)」との言及がある。契約の成立を認めず。
- 東京地判平成28・8・9(平26(ワ)7700号、2016WLJPCA08098008)
原告X(韓国法人)が、被告Y(日本法人)との間でSiCボールの売買契約を締結したところ、Yが引き渡したボールは不良品であり,Xは売買契約を解除したと主張して、Yに対し、支払った代金の返還とYの債務不履行によりXが被った損害の賠償を求めた事例。準拠法に関する判断なし。
- 東京地判平成28・8・3(平23(ワ)40897号、2016WLJPCA08038007)
原告Xが、被告Y1、被告Y2(日本法人)及び訴外Aとの間のTransition Agreementと題する契約に基づき、Y1及びY2に対し日本法人SW社のストックオプションを有していたところ、営業譲渡等により本件契約違反及び前記ストックオプションの侵害等があったと主張して、Yらに対し損害賠償を請求した事例。訴え提起時にYらの住所又は本店所在地が日本にあったことから管轄肯定。債務不履行に基づく損害賠償請求については準拠法条項に従い(通則法7条)、不法行為に基づく損害賠償請求については権利侵害という結果が日本で発生したとして(通則法17条)、何れも日本法を選択。
(-) 東京地判平成28・7・13(判時2320号64頁、判タ1437号200頁)(東京高判平成29・5・18 の原審)
ロシア連邦商工会議所附属国際商事仲裁裁判所が下した仲裁判断につき、日本国内で執行決定がなされたところ、原告(恐らく日本法人)が、同仲裁判断は有効な仲裁合意に基づくものではないこと等を異議事由として主張し、同仲裁判断に基づく強制執行の不許を求めた事例。確定した執行決定のある仲裁判断は民事執行法35条1項後段の「裁判以外の債務名義」には該当しない等として請求棄却。
- 東京地判平成28・7・1(平26(ワ)19678号、2016WLJPCA07018004)
亡A所有の不動産につき、A死亡を始期とした贈与を原因としてBを権利者とする始期付所有権移転仮登記がなされていたところ、BがAより先に死亡していることから贈与は効力を生じないとして、Aの相続人がBの相続人に対し仮登記の抹消登記手続を求めた事例。Bが米国人と婚姻した後、同国の国籍を取得して日本国籍を離脱しフロリダ州に居住していたことから、Bの相続に関する準拠法をフロリダ州法(通則法36条、38条3項)としつつも、同州法上不動産に関する相続については個々の財産の所在地法が適用されることから、日本法への反致を認めた。
- 東京地判平成28・6・30(平24(ワ)34452号・平25(ワ)2348号・平26(ワ)11836号・平26(ワ)17358号・平28(ワ)4439号、2016WLJPCA06308022)
日本に輸入されたロシア産の冷凍ボイルタラバガニ肉についての占有移転禁止の仮処分等に関連する一連の訴訟。一部の売買契約の準拠法を黙示の合意によりロシア法とし、所有権移転についてもロシア法で判断。インコタームズ2010にも言及。
- 東京地判平成28・6・29(平27(ワ)15818号、2016WLJPCA06298031)
医薬品等の製造及び販売等を業とする株式会社である日本法人原告の取締役であった被告が、原告に秘して中国で別法人を設立し薬局の経営をしたことが、原告の取締役としての忠実義務及び原告の従業員としての職務専念義務に違反したとして、不法行為等に基づく損害賠償が求められた事例。準拠法を日本法とすることについて当事者間に争いがなく、第三者の権利を害することとなる場合であることは窺われないことから、日本法への準拠法変更合意(通則法16条・21条)があったことを認めた。
- 東京高判平成28・5・11(平28(ネ)201号、2016WLJPCA05116007)
日本に在住するフィリピン人である原告・控訴人Xが、同じく日本に在住するフィリピン人である被告・被控訴人Yにおいて、Xとの間で宝石の販売に関する業務委託契約を締結し、Xに対しその目的物を引き渡したところ、同契約は解約されたからXはYに対し同契約に基づき目的物の返還債務又は同目的物の販売代金相当額である90万フィリピンペソの支払債務を負っていると主張しているが、XはYとの間で同契約を締結しておらず、Yからその目的物の引渡しも受けていないと主張して、XのYに対する同契約に基づく目的物返還債務及び90万ペソの支払債務がないことの確認を求めた事例。被告住所地により我が国の国際裁判管轄を肯定(民訴法3条の2第1項)。X及びYがいずれも我が国に居住していることや、仮に本件契約が成立しているとすれば、本件契約の内容となっている本件宝石の委託販売も、その販売代金から委託手数料を控除した残金の支払も我が国で行われるものと解されることから、本件契約に係る法律行為が行われた当時において同法律行為に最も密接な関係がある地は我が国であるとして、日本法を選択(通則法8条1項)。
- 東京地判平成28・4・13(平26(ワ)20181号、平27(ワ)9379号、LEX/DB25534027)
被告bから同人の銀行に対する借入債務について保証を委託された原告Xが、被告bに対し、保証委託契約に基づき、求償金等の支払、保証委託契約に基づく被告bのXに対する求償債務を連帯保証したhの相続人である被告c、被告d及び被告eに対し、連帯保証契約に基づき、金員の支払等を求めた事例。死亡したh等が韓国籍であることから、相続準拠法として韓国法を適用。
- 大阪高決平成28・3・28(平成28(ラ)129号、D1-Law28251758)
船舶への燃料供給に基づく船舶先取特権の準拠法が問題となった神戸地決平成28・1・21の抗告審決定。競売手続を規律する法廷地法である日本法上要求される船舶先取特権証明文書の提出があったとは言えないため、船舶先取特権の成立及び効力の準拠法如何に拘らず、競売開始決定は違法であると判示。
- 東京地判平成28・3・23(平27(レ)1062号、2016WLJPCA03238031)
被告・被控訴人Y法人との間でカナダでの家事使用人としての就労等に関する契約(原文中国語)を締結し、同契約に基づき教育訓練費用及び仲介手数料等の一部として50万円を支払った原告・控訴人X(日本居住)が、同契約で合意された約定解除権又は約定解約権を行使して同契約を解除又は解約したなどと主張して、Yに対し費用等の返還を求めた事例。日本の裁判所を指定する書面での管轄合意に基づき管轄肯定(民事訴訟法3条の7第1及び2項)。当事者間に準拠法に関する合意はなく、当該契約が消費者契約でありXの常居所地が日本にあることから、通則法11条2項により日本法を選択・適用。
- 大阪家審平成28・3・17(判タ1435号170頁)
中国人女性である元妻の申立人が、日本人男性であり離婚後の子らの親権者である元夫の相手方に対し、子らに対する面接交流を求めた事例。「面会交流は、子の福祉の観点から認められるものであり、子と最も密接な関係を有する地である子の住居所地国に国際裁判管轄を認めるのが相当であるところ、本件につき,未成年者らは日本に住所を有している」として管轄肯定。通則法32条により、子である未成年者らと父である相手方の共通の本国法である日本法を適用。
- 東京地判平成28・1・21(訟務月報62巻10号1693頁)
デラウェア州法人の株式
- 名古屋高判平成27・11・13(労経速2289号3頁)(上告棄却)
日本法人Y1に派遣作業員として雇用され、1審被告Y2の工場に派遣されていた1審原告ブラジル人Xが、同工場での作業中に右環指切断の傷害を負ったとして、Y1社及びY2に対し、不法行為に基づく損害賠償を求めた事例。加害行為の結果が発生した地の法であるとして日本法を準拠法とした。
- 名古屋地岡崎支判平成27・5・26(労経速2289号9頁)
ブラジル人原告Xが、日本法人被告Y1に派遣作業員として雇用され、日本法人被告Y2の工場に派遣されていたところ、同工場において、Xは、旋盤作業中、ボタン操作ミスにより右環指切断の傷害を負ったとして、Yらに対し、安全配慮義務の違反を理由に損害賠償を求めた事例。本件事故が日本国で発生したものであるから、最も密接な関係がある地は日本国であり、日本法が適用される(法の適用に関する通則法8条1項、12条)と判示。
- 東京地判平成27・5・19(平21(ワ)29238号、2015WLJPCA05198017)
Xら及びYが持分3分の1ずつ共有する建物の家賃に関するXらからYに対する不当利得返還請求。Yが家賃をハワイ州の銀行口座により受領・管理しておりハワイ州が原因事実発生地であることを認めつつも、Xら及びYが日本に常居所を有していたこと、Yが日本に居住しながら同口座を管理していたことから、原因事実発生地には日本も含まれるとして日本法を適用(法例11条1項・通則法14条)。