平成28年度の国際私法に関連する主な裁判例

(冒頭の + は渉外判例研究会で報告済み又は報告予定の裁判であることを示す。)

 平成28年度重要判例解説(有斐閣)のために横溝大教授(名古屋大学)が集めた国際私法関連の裁判例を、同書に重要判例として掲載したもの、それに準ずる重要性を有するもの、その他に分け、各項目ごとに裁判年月日の新しいものを先に記載した。各裁判例の紹介も横溝大教授(名古屋大学)による。前後の年度のリストもあわせて参考にされたい。

1. 平成28年度重要判例解説掲載の裁判例

- 大阪高決平成28・6・28(判タ1431号108頁、金判1498号52頁)
大阪地決平成27・3・17の抗告審決定。いずれもテキサス州法人である抗告人らが、日本法人・シンガポール法人である相手方らに対し,日本商事仲裁協会(JCAA)が下した仲裁判断につき、仲裁法44条1項4号・6号・8号に定める取消事由があると主張して、その取消しを求めた事例。仲裁人の一人に開示義務違反があり、当該違反はそれ自体が仲裁手続が日本の法令に違反するものとして仲裁法44項6号の取消事由に該当するとして、原決定を取り消した上仲裁判断を取消し。
+ 知財高判平成28・6・22(平26(ネ)10019号・平26(ネ)10023号、判時2318号81頁、2016WLJPCA06229004)(2018-07 加藤紫帆)
東京地判平成25・12・20の控訴審判決。①フランスである原告協会が,その会員(美術作品の著作者又は著作権承継者)から美術作品(以下「会員作品」という。)の著作権の移転を受け,著作権者として著作権を管理し,②原告X1が,亡パブロ・ピカソ(以下「ピカソ」という。)の美術作品(以下「ピカソ作品」という。)の著作権について,フランス民法1873条の6に基づく不分割共同財産の管理者であって,訴訟当事者として裁判上において,同財産を代表する権限を有すると主張した上で,原告らが,被告に対し,被告は,被告主催の「毎日オークション」という名称のオークション(以下「本件オークション」という。)のために作成したカタログ(以下「本件カタログ」という。)に,原告らの利用許諾を得ることなく,会員作品及びピカソ作品の写真を掲載しているから,原告らの著作権(複製権)を侵害しているなどと主張して,不法行為に基づく損害賠償請求等を求めた事例。X1の当事者適格につき、我が国手続法上実体準拠法を参照することが求められるとしてフランス法を参照しつつ、フランス法上の共同不分割権利者の合意は日本法の趣旨と合致し合理的であるとして、当事者適格を肯定。著作権移転契約につきフランス法を適用。損害賠償請求については通則法17条により日本法を適用。
- 大阪地堺支判平成28・3・17(平26(ワ)812号、2016WLJPCA03176001)
グアム法人に雇用されグアムで勤務していた日本人が、解雇され雇用契約上の地位確認等を求めた事例。国際裁判管轄を認めず請求却下。様々な管轄原因、特に民訴法3条の3(5)に関し丁寧な判断をしている。また、労働契約の準拠法はグアム法としている。
+ 最判平成28・3・10(民集70巻3号846頁、判タ1424号110頁、判時2297号42頁)(2016-07 高杉)
日本法人である上告人らが,被上告人がインターネット上のウェブサイトに掲載した記事によって名誉及び信用を毀損されたなどと主張して,被上告人に対し,不法行為に基づく損害賠償を請求する事例。閲覧可能性により結果発生地管轄を肯定。関連米国訴訟の存在から特別の事情を肯定。東京高判平成26・6・12も興味深い。
- 東京高判平成27・11・25(平成27(ネ)2461号、LEX/DB25541803)
日本で出版された書籍につき中国人である原告に対する名誉棄損を認め損害賠償を命じた中国判決の我が国での執行が問題となった東京地判平成27・3・20判タ1422号348頁)の控訴審判決。裁判所は、「中国においては、現在のところ、日本との間には互恵関係が存在しないとの理由のみをもって、日本の裁判所のした判決を承認しない扱いが確定している」とし、中国との間に相互の保証がないとして、当該判決が民訴法118条4号の要件を充たさないとした。

2. 重要性の高い裁判例

- 東京地判平成27・12・28(平25(ワ)32882号、2015WLJPCA12288002)
日本人原告が、元妻であるミャンマー人被告に対し、ミャンマー所在のマンションの一室を被告が原告に無断に処分したとして、不法行為等に基づく損害賠償請求。結果発生地としてミャンマー法を選択するも、ミャンマーの不法行為法が不明であるとし、「英国法の規定を参考にした上で、条理にしたがって判断するのが相当」と判示。

3. その他の裁判例

+ 東京地判平成28・9・28(平27(ワ)482号、裁判所Web)(2019-03 羽賀)
イタリア・オランダ・インドネシア・日本のアーティスト及びインターネットを利用してスマートフォン用ケースの販売等を行う日本法人が、ウェブサイトを通じて原告らの著作物を図柄として印刷したスマートフォン用ケースを製造・販売していた日本法人に対し、差止等及び損害賠償を求めた事例。差止・損害賠償につき、「同原告らが主張するところの不法行為の主要な部分である,被告による被告各商品の製造,譲渡等が行われた我が国の法を準拠法とするのが相当」と判示。また、アーティストと原告日本法人との契約についても、「我が国における著作物の利用に関する契約の成否及び内容」に係るものであることを理由に、黙示の意思により日本法を準拠法とした。
+ 東京地判平成28・7・19(平25(行ウ)808号、裁判所web)(2017-05 横溝)
液晶ディスプレイ用ガラス基板の製造及び販売を業とする会社である原告が,その製造に用いるプラチナを調達するため、各基本契約に基づいてその調達に関する各個別契約を締結してその引渡しを受け、上記各基本契約に基づく買取選択権を行使した時に金員を支払い、法人税の確定申告において、上記支払額から上記各個別契約開始時の時価及び両時点間の為替差益等を控除した金額を特別損失として計上し、これを損金の額に算入して申告をしたところ、処分行政庁から、本件特別損失計上額は上記プラチナの取得価額の一部であり損金の額に算入されないとして、法人税の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を受けたため、本件各処分の取消しを求めた事例。「法人税に係る法的規律の枠組み及び関係法令上の「取得価額」の位置付けに照らすと,法人税法及び同法施行令における法人による固定資産の「取得」の意義については,法人がその事業活動を行うに当たって準拠される私法法規及びこれに基づく私法上の法律関係を前提とした上で,租税法規における固定資産の取得の根拠となる経済事象としての実体を備えた行為として,所有権移転の原因となる私法上の法律行為がこれに当たるものと解するのが相当であり,上記「取得」の時期はその原因行為による所有権移転の時期がこれに当たるものと解される。しかるところ,本件において,原告とP1社及びP2社とは,本件各契約の準拠法としてニューヨーク州法を指定する旨の合意をしており(P1基本契約12条,P2基本契約15条),同州法が本件各契約の準拠法とされている(法適用通則法7条)ので,本件各契約における法人(原告)による固定資産(本件各プラチナ)の「取得」の時期,すなわち私法上の法律行為としての本件各契約による所有権移転の時期については,本件各契約の準拠法である同州法に基づく法律関係の規律を前提とした上で,我が国の租税法規における固定資産の取得の根拠となる経済事象としての実体を備えた行為として,我が国の民法上の所有権移転に相当する実質を備えた私法上の法律行為が行われたと認められる時期がこれに当たるものと解するのが相当である。」と判示。
- 東京地判平成28・6・30(平24(ワ)10567号・平27(ワ)10696号・平27(ワ)28881号)裁判所Web
原告Xら(日本法人及び日本人)と被告Y(韓国法人)との間で特許取得に関する不正競争行為の有無と特許の帰属等が争われた事例。損害賠償請求権に関する消滅時効、不当利得返還請求、各特許権移転手続請求につき、日本での特許出願を主要な事実として主張していることから日本法を選択。
- 東京地判平成28・6・29(平成25(ワ)28462号)LEX/DB25534450、2016WLJPCA06298029
日本に所在する不動産にに関する共有持分の確認及び所有権移転登記の抹消請求。相続準拠法として、被相続人の本国法である中国法上、反致の成立を認め日本法を適用。未成年者の行為能力につき、通則法4条1項により中国法を選択。親子関係については通則法32条により中国法を適用するも、後見についても親子関係の準拠法で判断。
+ 東京地判平成28・6・24(平成26年(行ウ)第472号、LEX/DB 25543350)(2017−05 竹下)
日本人父とロシア人母の子である原告らが、ロシア国籍を取得する手続きによる同国籍を取得したため、国籍法11条1項により日本国籍を喪失する惧れがあるところ、同規定は適用されないとして、日本国籍確認請求。原告らの外国籍取得は「自己の志望によって」したものと認められるとして請求棄却。
+ 東京地判平成28・6・20(平成24年(ワ)第29003号、2016WLJPCA06208005)(2017-03 草間)
英領バージン諸島法人である原告とその代表者(日本人・香港居住)が、ブログサービス等を提供するネヴァダ州法人である被告に対し、被告が提供するブログサービス上に掲載された原告らの名誉を穀損する表現を削除する義務を怠ったとして、不法行為に基づく損害賠償請求。民訴法28条・民法35条によりXの当事者能力を肯定。本件記事が日本に居住する日本人読者を主たる対象としていたことから、結果発生地として我が国の国際裁判管轄を肯定。本件記事による最も重大な社会的な損害は日本において生じているとして、通則法20条により日本法を準拠法とした。
- 東京地判平成28・5・31(平26(ワ)29519号)2016WLJPCA 05318002
公海上の船舶衝突に関する損害賠償請求。「本件について適用すべき準拠法が日本法であることについては、当事者間に争いがない」として、日本法により判断。
- 東京地判平成28・5・24(平27(ワ)14194号)2016WLJPCA05248004
死亡したAとの間で裁判上の和解をした原告が、被告らがAの相続人であるとして、被告らに対し和解金の支払いを求めた事例。被告らが相続人たる地位を有しているか否かを判断する際通則法36条により日本法を適用。
- 大阪地判平成28・5・23(平27(ワ)10913号)裁判所Web
米国での特許出願手続を行った被告らに対し、被告らがクレーム補正に対する審査官からの電話連絡への対応を怠ったため損害を被ったとして、出願人である原告が損害賠償請求。通則法17条又は21条により日本法を選択・適用。
- 東京地判平成28・5・20(平成25年(ワ)第28812号)LEX/DB25543053
香港法人である被告に解雇された原告が、解雇は無効である旨を主張して、被告に対し、原告が雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認と賃金及び賞与等の支払を求めた事例。香港法を契約準拠法とする合意の存在にも拘らず、日本が労務提供地であったことを理由に、通則法12条1項により労働契約法16条を適用。
- 大阪地判平成28・5・13(平26(行ウ)52号)裁判所Web
入管法上の退去強制令書発付処分を受けたペルー人原告が、日本国籍を有することの確認等を求めた事例。国籍留保の意思表示がなされたということは出来ないとして請求棄却。
- 大分地中判平成28・4・28(平成27(ワ)220号)裁判所Web
原告(日本法人)が、太陽光発電事業に関し、被告(日本法人)との間で、役務提供契約につき未払報酬等の支払いを求めた事例。「シンガポールは紛争解決の除外地域とする。」「The exclusive location to settle disputes is Singapore.」という条項を極めて不明瞭で不合理である等としてシンガポールを指定した専属的管轄合意の存在・効力を否定し、我が国の管轄を肯定。
- 東京地判平成28・4・27(平25(行ウ)38号2016WLJPCA04278020
ワシントン州法に基づき設立されたLimited partnership(LPS)が租税法上の法人に該当するか否かが問題となった事例。最判平成27年7月17日の判断枠組に依拠し、我が国租税法上の法人に該当するとした。
- 静岡家浜松判平成28・4・26(平27(家ホ)75号)2016WLJPCA04266001
フィリピン人女性から日本人男性に対する子の認知請求。被告住所地管轄により国際裁判管轄肯定。通則法29条2項により認知すべき者の本国法として日本法を適用。
- 名古屋地判平成28・4・22(平27(ヲ)3262号)2016WLJPCA04226001
中国法人で日本に本店を置く被申立人(債権者)において,中国(香港)法人である申立人(債務者)が所有者から定期傭船している船舶につき,当該船舶への給油代金を被担保債権とする船舶先取特権を有するとして,その先取特権に基づく競売開始決定を得たのに対し,申立人がその取消しを求めて執行異議を申し立てた事例。船舶先取特権の準拠法が問題となったものの、裁判所は両当事者間に契約関係がなかったとして申立てを退け、この点につき判断しなかった。
- 東京高判平成28・4・22(平成27(行ケ)36号)公取委HP
東南アジアの現地製造子会社等に購入させるテレビ用ブラウン管に関する国際カルテルにつき公取委が下した排除措置命令に対する取消請求。問題となった合意が、本件ブラウン管の購入価格、購入数量等の重要な取引条件について実質的決定をする我が国ブラウン管テレビ製造販売業者を対象とするものであることから、独禁法の適用を肯定。
- 東京地判平成28・4・21(平24(ワ)11639号)2016WLJPCA04218008
オマーン法人Aを被保険者とする保険会社との間の再保険契約に基づき再保険金をそれぞれ支払った仏独瑞英の保険会社であるXらが,日本法人であるYに対し、Aによるオマーン国内でのメタノール精製プラント建設に参画したYには同プラント設計に関する注意義務に違反してAに損害を被らせた不法行為があると主張して、Aから代位取得したとしてYに対し不法行為による損害賠償請求。不法行為の準拠法がオマーン法に依るか否かを判断することなく、日本法上不法行為とならないとして請求棄却。
- 東京地判平成28・4・20(平27(ワ)20457号)2016WLJPCA04208015
日本法人が国に対し、裁判官の違法行為や裁判官に対する善管注意義務違反を理由に損害賠償請求。国籍法15条1項につき、日本国籍を選択しない者に対して法務大臣が行う催告は裁量であり義務ではないとの言及。
- 東京高判平成28・4・13(平成27(行ケ)38号)公取委HP
東南アジアの現地製造子会社等に購入させるテレビ用ブラウン管に関する国際カルテルにつき公取委が下した排除措置命令に対する取消請求。問題となった合意が、本件ブラウン管の購入価格、購入数量等の重要な取引条件について実質的決定をする我が国ブラウン管テレビ製造販売業者を対象とするものであることから、独禁法の適用を肯定。
- 東京地判平成28・4・11(平25(ワ)23687号)LEX/DB25542793
米国法人である被告に期限の定めのなく雇用されていた原告が,勤務態度,業績不良,社員としての適格性欠如,業務上のやむを得ない事情の存在などを理由として普通解雇されたが,これらに該当する事実はなく解雇は無効であるとして,被告に対し,地位確認及び解雇後の賃金の支払を求めるとともに,不当な退職強要は職場環境改善義務違反であるなどとして,不法行為に基づき慰謝料を請求する事例。準拠法に関する判断なし。
- 東京地判平成28・4・8(平27(ワ)25027号)2016WLJPCA04086005/LEXDB25543036
原告らが、米国ネヴァダ州法人である被告に対し、それぞれ、①被告との間で締結した金融商品取引契約に基づき、約定の満期が到来した出資金(元金のみ)の返還を求め,これと選択的に,②被告が原告らに対し,出資金の使途や管理状況について虚偽の説明をして出資をさせたと主張して,不法行為に基づき,出資金相当額の損害賠償を求める事例。契約準拠法である米国法及びネヴァダ州法の下でも明らかとして請求認容。
- 東京地判平成28・3・22(平27(ワ)10740号)LEX/DB25536111
中国人姉Xが、中国人妹Yに対し、Yが日本に留学した時からYの長女の監護及び養育を行った報酬を請求した事例。委任契約の準拠法につき当事者間に争いがないとして中国法を適用。
- 東京地判平成28・2・25(平27(ワ)21195号)2016WLJPCA02258018
紙幣整理機に関する売買契約の解除に基づく、マレーシア法人から日本法人に対する代金返還請求。被告による本件機械の給付が本件売買契約において特徴的な給付であるといえることから、被告の常居所地法である日本法が本件売買契約の最も密接な関係がある地の法として本件の準拠法となる(通則法8条1項、2項)とした。
- 東京地判平成28・2・23(平25(行ウ)254号)2016WLJPCA02238033
日本人父の子であるブラジル人Xが、退去強制令書発付処分を受けたことに対し、国籍留保制度を定める昭和59年改正前国籍法9条が憲法14条1項及び13条に違反し無効でありXが日本国籍を有すると主張し、処分取消しを求めた事例。合憲とした。
- 東京地判平成28・2・23(平27(行ウ)208号・平27(行ウ)209号)2016WLJPCA02238032
イラン人夫婦の原告らが入管法上の難民認定を申請したところ不認定処分を受けたため、取消請求。入管法2条3号の2の「難民」の解釈に関し、原告妻のベトナム国籍の有無につき、ベトナム国籍法に基づきこれを肯定。
- 東京地中判平成28・2・15(平26(ワ)19860号)2016WLJPCA02156001
島野製作所からアップルに対する独禁法違反に基づく損害賠償請求。加州裁判所を指定する専属的管轄合意条項につき、昭和50年最高裁判決に依拠して判断。同条項が一定の法律関係を対象にしているということが出来ないことを理由に方式の有効性を否定。
- 東京地判平成28・2・9(平26(行ウ)580号)2016WLJPCA02098021
退去強制令書の発付に対するフィリピン人男性からの取消請求。子らとの関係を保護する必要性を判断するに際し、原告の親権の有無につき通則法32条によりフィリピン法を適用し、これを否定。
+ 東京地判平成28・1・29(判時2313号67頁、2016WLJPCA01296009)(2017−10 神前)
日本人の元妻が離婚した日本人の元夫に対して得た養育費支払に関するイリノイ州判決の我が国での執行を求めた事例。民訴法118条の何れも要件も充たすとして請求認容。
- 東京高判平成28・1・29(判時2303号105頁)
東南アジアの現地製造子会社等に購入させるテレビ用ブラウン管に関する国際カルテルにつき公取委が下した排除措置命令に対する取消請求。問題となった合意が、本件ブラウン管の購入価格、購入数量等の重要な取引条件について実質的決定をする我が国ブラウン管テレビ製造販売業者を対象とするものであることから、独禁法の適用を肯定。
- 東京地判平成28・1・26(平26(ワ)24643号、2016WLJPCA01266020)
マグネシウム合金の売買契約に基づき台湾法人が日本法人に対し代金等支払請求。当事者間に争いがないこと、及び、通則法8条1項から、契約準拠法は日本法であることが明らかと判示。
- 東京地判平成28・1・25(平27(ワ)6847号、2016WLJPCA01258003)
原告(日本法人)が7台の中古自動車をトリニダード・トバゴに輸出するに当たり、被告(日本法人)に海上運送を委託して本件貨物を引き渡したところ、被告の委託した現地代理店が船荷証券の原本等の交付を受けることなく荷渡指図書を発行するなどしたため、輸入者でない第三者が港湾当局から本件貨物を不法に持ち去ったとして、被告に対し、債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償を請求した事例。事実認定のみによる判断。
- 最判平成28・1・21(判タ1422号68頁・裁判所時報1644号1頁)
日本法人である被告のテレビ番組に出演した台湾パイワン族の原告Xが、名誉棄損に基づく損害賠償を求めた事例。上告受理申立理由において通則法19条による台湾法の適用が主張されたものの、準拠法に関する判断なし。
+ 神戸地判平成28・1・21(平成27年(ヲ)第295号、平成27年(ヲ)第314号、2016WLJPCA01216004)(2016-12 嶋)
船舶への燃料供給に基づく船舶先取特権の準拠法が問題となった事例。法定担保物権であることを理由に目的物所在地法(当該被担保債権発生時の船舶の現実の所在地法:中国法・日本法)と被担保債権の準拠法(日本法)とを累積適用。
- 東京地判平成27・12・25(平27(レ)246号)2015WLJPCA12256007
賃貸借契約終了に基づく建物の明渡等請求。原審係属中に原告(韓国人)が死亡したことから、相続人が訴訟を承継。相続分の判断につき通則法36条により被相続人の本国法である韓国法を適用。
- 東京地判平成27・12・25(裁判所Web〔平26(ワ)8174号〕)
液晶ディスプレイパネル等の開発及び製造等を行う韓国法人である原告Xが,Xと被告Y1との間に,被告Y1がXに対して本件特許権1及び本件特許権3に対応する特許出願に係る特許権又は特許を受ける権利を無償で譲渡する旨の契約が締結されたと主張し,また,Xと被告Y2との間に,Y2がXに対して本件特許権2に対応する特許出願に係る特許を受ける権利を無償で譲渡する旨の契約が締結されたと主張して,上記各契約に基づき,Y1に対しては本件特許権1及び同3につき,Y2に対しては同2につき,それぞれ特許権の移転登録手続を求めた事例。本件合意書の準拠法につき、裁判所は、「本件合意書9条において,本件合意書に関して紛争が生じた場合には,その準拠法は韓国法と指定されており,本件サインページにはY2及び訴外Aの署名があることが認められることからすれば,本件合意書による契約の成否については韓国法によるというのが,当事者の合理的意思であったと認めるのが相当であり,本件の準拠法は,韓国法であるというべきである( 法の適用に関する通則法附則3条3項,旧法例7条1項)。」と判示。
- 福岡地小倉支決平成27・12・4(平27(ヲ)2107号)2015WLJPCA12046002
神戸地決平成28・1・21と同一の当事者間での異なる船舶に対する略同内容の事件であり、船舶への燃料供給に基づく船舶先取特権の準拠法が問題となった事例。上記神戸地決同様、目的物所在地法(当該被担保債権発生時の船舶の現実の所在地法:中国法・日本法)と被担保債権の準拠法(日本法)とを累積適用。
- 静岡家浜松支判平成27・12・2(判時2292号79頁)
イタリア人男性から元妻の父である日本人男性に対する子の引渡請求。法の適用に関する通則法32条の常居所地が日本であるとして日本法を選択(議論の余地あるか)。
- 東京地判平成27・11・26(平23(ワ)40834号)2015WLJPCA11268018
被告(日本人)が死亡したA(日本人)の所謂「相続させる」遺言によって取得した相続財産が原告(Aの子であるC〔日本人〕)と婚姻していたドイツ人Dの子)の遺留分を侵害するとして、原告が被告に対して遺留分減殺請求権を行使したことから、債権の一部につき原告が債権者であることの確認を求めるとともに、不当利得に基づき、現金及び建物の賃料収入及び投資信託の分配金について、遺留分減殺請求後の持分に相当する金員の支払等を求めた事例。CからXへの法定相続分につき、通則法36条により日本法を適用。
東京高判平成27・11・16(労判1134号57頁)
フランス人である原告が、東日本大震災直後にシンガポールに避難し業務を行わなかったことを理由に不当に解雇されたとして、日本法人である被告に対し労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めた事例。日本法による判断。
- 名古屋高判平成27・11・13(労働経済判例速報2289号3頁)
ブラジル人原告が、日本法人の被告に対し、日本国内で就労した際に生じた事故を理由に不法行為に基づく損害賠償を求めた事例。加害行為の結果が発生した地の法として日本法が準拠法になるとした。尚、原判決(名古屋地岡崎市判平成27・5・26同誌同号9頁)は通則法8条1項・12条により日本法を選択している。
- 大阪地判平成27・11・6(金判1484号37頁)
- 東京地判平成27・9・8(平26(ワ)1590号〔2015WLJPCA09088006〕)
日本人である原告Xがアイルランド法人である被告Yとの間で締結した、「Xの管理するウェブサイトにYによる広告を設置し,ウェブサイトを閲覧した者が広告をクリックするごとに,YはXに支払うべき収益を加算してXに申告する。各月の収益はその月の月末から30日以内にYからXに支払われる。」という趣旨の契約に基づき、広告料の支払を請求した事例。契約中の「本契約に基づくまたはこれに関連して生じる一切の紛争または請求については,カリフォルニア州サンタクララ郡の裁判所において裁判が行われるものとします。」という専属的管轄合意が問題となった。当該合意が公序法に反するというXの主張に対し、裁判所は、「本件契約のようなウェブサイト等での広告配信サービスに関する契約において,ウェブサイト運営者は,Yから金銭の支払を受けて利益を得る立場にある上…,支払を受ける(べき)金額が多くの場合比較的少額であるとする点については,これを認めるに足りる証拠がない。したがって,一概にウェブサイト運営者がYと比べて圧倒的に弱い立場にあるということはできない。」等として、管轄合意を有効としてXの請求を却下。
- 東京地判平成27・7・27(LEX/DB)
新日鉄対ポストに関する文書提出命令。
- 東京地判平成27・7・15(平26(レ)481号、2015WLJPCA07158027)
イラン人間でのイランへの物品運送契約に関し、運送遅滞及び一部の荷物の滅失等の債務不履行に基づき損害賠償請求がなされた事例。被告住所地により管轄肯定。契約準拠法に関する合意があったとして通則法7条により日本法を選択・適用。
- 東京地判平成27・3・12(LEX/DB)
フィリピン人からの帰化申請不許可事件。国籍法5条の解釈。養子縁組の効力無効との主張あるも、裁判所は判断せず。
+ 東京家審平成27・2・19(判タ1421号394頁、平成26(家)10441号)(2017−07 種村)
フィリピンに渡航した日本人男性とフィリピン人女性との間の子からの就籍許可申立。法例13条1項により、婚姻の実質的成立要件につき日本法・フィリピン法を、形式的成立要件につきフィリピン法を適用。
- 東京地判平成27・2・16(平24(ワ)3080号・平成25(ワ)141866号、LEX/DB 25523642)
ケイマン諸島法人である原告Xが、米国人である訴外Aが米国カリフォルニア州において行った詐欺により損害を被ったところ、マーシャル諸島法人である被告法人YらはAの財産隠匿を目的として設立されたペーパーカンパニーであり、法人格否認の法理によりZ8と同一の責任を負うとして、Aの不法行為に基づき損害賠償を求めた事例。日本法の下でも加法の下でも法人格が否認されるとした。
- 東京地判平成27・1・22(LEX/DB)
スリランカでの業務委託契約に関する紛争。契約準拠法がスリランカ法であるにも拘らず、判決では特に言及せず。
- 東京地判平成26・11・19(判タ1421号288頁)
- 東京地判平成26・10・29 (平25(ワ)14010号、2014WLJPCA10298031、LEXDB 25522384)
日本法人である原告らが、被告Y1株式会社(加州法人)他4名との間で成立した裁判上の和解に基づく債務が弁済及び相殺により消滅したものと主張して、Y1社等に対し,債務不存在確認、和解調書に基づく強制執行の不許及び承継執行文に基づく強制執行の不許を求めた事例。「本件訴えのうち請求異議の訴え及び執行文付与に対する異議の訴えに係る部分は,本件和解が成立した東京地方裁判所の法定専属管轄に属しており,被告Y1社の日本における支店が閉鎖されたことをもって,本件訴えについて,これと争点を共通にする債務不存在確認を求める部分を含め,当裁判所の管轄権を認めることが当事者の公平,裁判の適正,迅速を期するという理念に反するとは認められない」として、Y1に対する管轄肯定。Y1の法人格否認が問題となったが、準拠法についての判断なし。
- 東京地判平成26・10・14(平26(ワ)14340号、2014WLJPCA10148015、LEX/DB 25522168)
相続人である原告らが、日本の銀行である被告の日本にある支店における被相続人(韓国人)名義の普通預金口座に係る預金債権を各4分の1ずつ相続したと主張して、被告に対し支払を求めた事例。通則法36条により韓国法を選択・適用。反致は認めず。
- 名古屋家審平成26・7・17(判タ1420号396頁)
日本人Aとフィリピン人Bの夫婦が、Bの婚外子である未成年者Cにつき養子縁組許可を申立てた事例。A、B、Cが日本に住所を有することから日本の国際裁判管轄肯定。通則法31条1項により、Aとの関係では日本法+フィリピン法の保護要件、Bとの関係ではフィリピン法を選択・適用し、申立認容。
- 東京高判平成25・11・28(判タ1419号146頁、判時2216号52頁)
台湾人の名誉棄損
- 東京地判平成25・10・28(判タ1419号331頁)
内縁不当破棄