平成19年度重要判例解説用資料

(冒頭の + は渉外判例研究会で報告済み又は報告予定の裁判であることを示す。)

平成17年(その3)

+ 東京家判平成17・3・31(平成16年(家ホ)第820号)(LEX/DB 28131220)(2008-11 中西)
下記東京高判平成17・9・14(平成17年(ネ)第2294号)の一審判決
- 東京家決平成17・4・6(平成17年(家ロ)第8032-8034号)(LEX/DB 28131226)
中国人夫婦間で中国において離婚訴訟が進行中に、わが国において財産分与請求権を被保全権利として仮差押命令が申し立てられ、その後わが国で離婚等請求訴訟が提起された事案において、仮差押命令に対する異議が申し立てられた。裁判所は、後訴である日本離婚訴訟事件は国際的二重起訴として不適法になるとした上で、被保全権利が外国裁判所の判決で認められる場合においても、それを本案として保全処分を行うことができるとした。
- 東京高判平成17・5・13(訟月53巻1号75頁)
戦時中の住民虐殺行為を理由とする損害賠償請求について、法例の適用対象外としている。
+ 東京高判平成17・9・14(平成17年(ネ)第2294号)(LEX/DB 28131221)(2008-11 中西)
中国人夫婦の離婚、養育者の指定、慰謝料、財産分与の支払及び養育費の支払が問題となり、一審判決は、中国において原被告間の離婚を認める一審判決が下されたことを理由に訴えを却下していた。これに対し、原判決を取り消し、訴えを原審に差し戻した。本判決には上告受理申立てがなされたが、不受理決定がなされている(最決平成18・7・7平成17年(受)第2338号)

平成18年(その2)

+ 東京地判平成18・1・19(判タ1229号334頁)(2007-06神前)
シンガポール共和国裁判所の判決を承認した事例。
- 大阪高判平成18・2・1(金法1798号45頁)
偽造された信用状の買取に関する事例。
- 京都家審平成18・3・31(家月58巻11号62頁)
日本と韓国との重国籍を有する子の監護についてわが国の国際裁判管轄を認め、法例21条、28条1項により日本法を準拠法としたもの。
+ 横浜地判平成18・6・16(判時1941号124頁)(2008-06福井)
日本企業が台湾法人に対して売買代金を請求した事件について、わが国の国際裁判管轄を否定した事例。「実質的・継続的に商業活動を営んでいること」は国際裁判管轄の根拠とはなりえないとした。
- 大阪高決平成18・7・31(家月59巻6号44頁)
タイに居住する夫に対する婚姻費用分担請求について、タイの物価が日本に比べて格段に安いことから婚姻費用を算定した事例
- 東京地判平成18・9・26(判時1962号147頁、判タ1228号330頁)
キューピーの著作物に関する一連の裁判のひとつ。国際私法に関する判示はない。
- 大阪高判平成18・9・27(訟月53巻5号1633頁)
戦時中の強制連行・強制労働に関し、本件では国家の公益と密接な関係を持つ公法的法律関係が問題になっているとし、法例による準拠法選択を否定したもの。法例11条1項により強制連行部分に中華民国法を適用した一審判決(京都地判平成15・1・15判時1822号83頁)とは異なる見解を示した。
+ 東京高判平成18・10・24(判タ1243号131頁)(2009-03原)
韓国法人Yから日本国内における会社設立などを委任されたXが種々の活動を行っていたにもかかわらず、Yから一方的に委任契約を解除されたとして損害賠償を求めた事件について、本件契約の当事者はその契約関係の処理について日本法を準拠法とする黙示の意思を有していたとした一審判決(東京地判平成17・6・17判タ1243号136頁)を支持したもの。
+ 東京高決平成18・10・30(判時1965号70頁)(2009-03山田)(平成19年重判北坂)
中国人間の扶養料請求について日本に国際管轄権を認め、扶養義務については子の常居所地法である日本の法律を準拠法とし、子がいつ成年に達したかの点については先決問題として本国法を準拠法とした上で、反致の成立を否定したもの。子が成人に達したことを考慮しても、なお相手方に扶養料として相当分を負担する義務があるとしている。
+ 東京地判平成18・10・31(判タ1241号338頁)(2008-03安達)(平成19年重判齋藤彰)
船舶事故に基づく損害賠償請求の国際裁判管轄――不作為の不法行為地等
- 東京地判平成18・12・27(平成17年(ワ)第12576号)
職務発明に関して、最判平成18・10・17(民集60巻8号2853頁)に依拠して判断を行っているもの。

平成19年(その1)

- 東京地判平成19・1・30(判時1971号3頁)
職務発明に関して、最判平成18・10・17(民集60巻8号2853頁)に依拠して判断を行っているもの。
- 東京高判平成19・3・13(訟月53巻8号2251頁)
戦時中にわが国が遺棄した兵器の被害者から日本国に対する損害賠償請求について一審判決(東京地判平成15・5・15訟月50巻11号3146頁)を引用し、法例による準拠法選択を否定した。
- 知財高判平成19・3・15(平成18年(ネ)第10074号)
職務発明に関して、最判平成18・10・17(民集60巻8号2853頁)に依拠して判断を行っているもの。
+ 東京地(中間)判平成19・3・20(判時1974号156頁)(2008-01森下)(平成19年重判山田)
国際訴訟競合が問題となる事案において、内国の債務不存在確認請求についてわが国の国際裁判管轄を認め、被告の本案前の主張をいずれも理由がないとしたもの。
- 東京簡判平成19・3・20(平成18年(ハ)第16345号)
アメリカ合衆国からシンガポールまでの国際航空運送に関して改正ワルソー条約が適用され、わが国の国際裁判管轄が否定された。
+ 最決平成19・3・23(民集61巻2号619頁、家月59巻7号72頁)(2008-03伊藤)(平成19年重判中野)
民法が実親子関係を認めていない者の間にその成立を認める外国裁判は、民訴法118条の承認の対象となるが、同条3号の公序に反するとしてわが国においては効力を有しない。
- 大阪地判平成19・3・29(平成18年(ワ)第6264号)(平成19年重判元永)
外国特許権に基づく差止請求権の存否が問題となり、当事者の黙示の意思から特許権に関する和解契約の準拠法を日本法とし、本件和解に附随して発生する信義則上の義務の準拠法も同様に日本法とした。
- 東京地判平成19・4・17(判時1986号23頁)
いわゆるレポ取引の性質が問題となったもの。両当事者は準拠法についても主張しているが、裁判所は特に判断をしていない。
- 東京地判平成19・4・18(平成17年(ワ)第11007号)
職務発明に関して、最判平成18・10・17(民集60巻8号2853頁)に依拠して判断を行っているもの。
+ 東京高判平成19・4・25(家月59巻10号42頁)(2008-09小川)
前婚の離婚を無効とし、重婚の効果について、法適用通則法24条により、より厳格な効果を認める方の法律を適用し、後婚を当然無効とした事例。原審(東京家判平成18・10・5(家月49巻10号49頁))は、法例16条・14条により婚姻を取り消しうるものと判断していた。
- 最一小判平成19・4・27(平成17年(受)第1658号)(民集61巻3号1188頁、判時1969号28頁、判タ1240号121頁)
日中戦争遂行中に生じた中華人民共和国国民の日本国等に対する請求権は、日中共同声明第5項により裁判上訴求する権能を失ったとしたもの。
- 最一小判平成19・4・27(平成17年(受)第1735号)(判時1969号38頁、判タ1240号136頁、訟月54巻7号1511頁)
日中戦争遂行中に生じた中華人民共和国国民の日本国等に対する請求権は、日中共同声明第5項により裁判上訴求する権能を失ったとしたもの。
+ さいたま地裁平成19・5・16(平成17年(行ウ)第3号)(2008-06横溝)
租税関係事件であるが、ニューヨーク州法に準拠して設立されたLLCが、わが国租税法上の法人に該当するか問題となった事例。裁判所は、「我が国の租税法上、『法人』に該当するかどうかは、私法上、法人格を有するか否かによって基本的に決定されている」ことを前提に、「外国の法令に準拠して設立された社団や財団の法人格の有無の判定に当たっては、基本的に当該外国の法令の内容と団体の実質に従って判断するのが相当であり、本件LLCは、米国のニューヨーク州法…に準拠して設立され、その事業の本拠を同州に置いているのであるから、本件LLCが法人格を有するか否かについては、米国ニューヨーク州法の内容と本件LLCの実質に基づき判断するのが相当である」としている。
- 東京高判平成19・7・18(訟月53巻8号2314頁)
戦時中にわが国が遺棄した兵器の被害者から日本国に対する損害賠償請求について原告の請求を認めた一審判決(東京地判平成15・9・29(判例時報1843号90頁)を取り消して請求を棄却した。国際私法に関しては、「国家賠償請求権の存否に関する法律関係…が準拠法の選択を国際私法の規律にゆだねるべき法律関係に当たると解することは困難といわざるを得ない」とした点が注目される。
+ 東京地判平成19・8・29(平成18年(ワ)第15552号)(判時2021号108頁)(2010-01道垣内)
著作権侵害を理由とする差止請求および損害賠償請求についてわが国の国際裁判管轄を認め、前者については「保護が要求される同盟国の法令」としてわが国の著作権法を、後者については法例11条1項により日本法を準拠法とした。
+ 東京地判平成19・10・26(平成18年(ワ)第7424号)(LEX/DB 28132314)(2009-01木棚)
相続財産たる著作権の譲渡について、最判平成6・3・8(民集48巻3号835頁)に依拠して、本件著作権の譲渡について適用されるべき準拠法は、相続の準拠法ではないとした上で、譲渡の原因関係である契約等の債権行為については、法例7条1項により日本法を準拠法とする旨の黙示の合意が成立したものと推認し、目的である著作権の物権類似の支配関係の変動については保護国の法令が準拠法となるとした。

民集60/4-10, 61/1-4

判時1941-61-80

判タ1218-36-50

家月58/11-59/10

金法1786-1819

金判1252-1278

労判921-943

訟月52/9-12, 53/1-8