平成18年度重要判例解説用資料

(冒頭の + は渉外判例研究会で報告済み又は報告予定の裁判であることを示す。)

平成17年(その2)

+ 東京地判平成17・2・18(判時1925号121頁)(2007-01 植松)
日本に居住する米国人夫婦の離婚につき、米国テキサス州法が適用され、離婚請求が認容され夫婦共有財産が分割された事例
- 大阪高決平成17・3・3(家月58巻2号166頁)
日本人男性と婚姻後に日本に帰化し、その後離婚した女性について、子の高校進学を機に新たに選択した氏への変更の許可を求めた事件。日本人であれば婚氏続称後の復氏にあたるとして申し立てが認容された。
+ 大阪高決平成17・5・20(判時1919号107頁)(2007-03 大村)
夫の精子を用いてされた代理懐胎により分娩された子と妻との間には法律上の母子関係は認めることができないとし、出生届を不受理とした市長の処分が相当とされた事例
+ さいたま家審平成17・7・8(判例集未登載)(2006-09 西谷)
カナダから日本への子の奪取をめぐる事件
- 仙台高決平成17・11・11(金判1231号24頁)
船舶先取特権に基づく担保船舶競売の開始要件である当該担保権の存在を証する文書(民事執行法181条1項4号)が提出されたとはいえないとされた事例。船舶が外国港あるいは洋上にいる際に部品代、入港経費、燃油代等が補給された事例である。
- 大阪地判平成17・11・18(平成14(行ウ)161、退去強制令書発付処分取消等請求事件)
国籍留保の届出はされていないが、夫妻の責めに帰すべき事由があるということはできないとして、その子の日本国籍が認められた事例。中国における婚姻の成立についても判断している。
+ 最判平成17・11・21(民集59巻9号2558頁、金判1242号34頁)(下級審について2007-01 神前)
船舶の衝突によって生じた損害賠償請求権の消滅時効の起算点について判示したものであり、最高裁は特に国際私法に関連する判示はしていない。しかし、第一審(東京地判平成15・6・30(平成13年(ワ)第25521号)金判1242号45頁)および原審(東京高判平成16・5・27(平成15年(ネ)第4064号)金判1242号36頁、民集59巻9号2583頁)において、公海上における日本船舶とリベリア船舶との衝突の準拠法についても判断がなされ、日本法が準拠法とされている。
+ 東京高決平成17・11・24(家月58巻11号40頁、判タ1213号307頁)(2006-11 草間)
日本人夫Yとフィリピン人妻Xとの間に生まれた子Z(フィリピン国籍のみを有する)の親権者指定について、わが国の国際裁判管轄を認め、フィリピン法により親権者をフィリピン人母と定めた事例。XZはフィリピンで、Yは日本で暮らしておりXの代理人がYの住所地に親権者指定を申し立てたもの。原審(千葉家松戸支審平成17・6・6家月58巻11号45頁)はわが国の国際裁判管轄を否定し、申立を却下していた。
+ 東京地判平成17・12・27(判時1928号85頁、判タ1223号287頁)(2008-03 竹下)
外国国家が大使館用の土地建物を取得する購入資金について融資を仲介する契約を締結することは主権的行為であるとし、仲介契約に基づく報酬金支払い請求に関しては当該外国国家にわが国の民事裁判権は及ばないとされた事例。
- 知財高決平成17・12・27(平成17年(ラ)第10006号)
不正競争を理由とする差止請求の準拠法について、条理により決するのが相当であるとし、当事者双方が日本に本店所在地及び常居所を有すること、本件差止請求は日本国内で締結された両者間の共同開発契約又はその合意解除(約)に付随する法律関係であること等の事情に照らすと、日本法が本件差止請求に関して最も密接な関係を有する法域の法として、準拠法になると解するのが相当であるとした。

平成18年(その1)

+ 知的財産高判平成18・1・31(判時1922号30頁)(2006-11 青野)
リサイクル製品の輸入等に対する特許権者の差止請求が認められた事例
- 東京高判平成18・2・28(平成17年(行コ)第134号、退去強制令書発布処分取消等請求控訴事件)
東京地判平成17・4・13の控訴審。原判決を取り消し、国籍確認請求を棄却。
- 東京高判平成18・2・28(家月58巻6号47頁)
 外国籍女性を母、日本国籍男性を父としてわが国で出生後に父から認知を受けた者の日本国籍取得の可否(否定)(東京地判平成17・4・13の控訴審)
- 東京地判平成18・3・22(判時1935号135頁、判タ1226号284頁)
リヒャルト・シュトラウスを著作者とする音楽著作物の著作権について、連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律4条1項による、著作権の存続期間の加算が認められないとされた事例
- 東京地判平成18・3・29(判時1932号51頁、判タ1221号87頁)
出生後に日本人父から認知を受けた子の日本国籍を有することの確認が求められ、国籍法3条1項が準正を国籍取得の要件とした部分は違憲無効であるとし、確認請求が認容された事例。
+ 東京地(中間)判平成18・4・4(判時1940号130頁、判タ1233号332頁)(関西2007-03 片岡)
日本法人が外国法人から輸入した電子部品に瑕疵があることを理由とする損害賠償請求について、わが国が不法行為の結果発生地であること、電子部品の製造と損害発生との間に本案前審理に必要な事実的因果関係が認められること等を理由に、わが国の国際裁判管轄を肯定した事例。
+ 東京高判平成18・4・13(判時1934号42頁)(2007-03 山田)
前婚の妻である韓国に在住する韓国人Xらから、後婚の妻である日本に在住する日本人Yに対する、重婚を理由とする後婚の取消請求訴訟の係属中に、Yが提起した前婚の無効確認請求等の反訴がなされた。一審(横浜家川崎支判平成17・9・27)は本訴について請求を認容し、反訴については国際裁判管轄を否定して訴えを却下した。これに対し本判決は、反訴についてもわが国の国際裁判管轄を認め、本訴部分も含めて一審判決を取り消し、事件を差し戻した。
+ 東京地判平成18・5・18(労判919号92頁)(2008-01青野)
東京にある米国ジョージア州港湾局極東代表部に勤務していた原告と同州との間の労働契約の準拠法を、黙示の合意により日本法とし、解雇を無効とした事例
- 広島地判平成18・5・29(平成17年(ワ)第150号、損害賠償請求事件)
ミャンマーの国籍を有し、現在はアメリカ合衆国に居住する原告の、我が国における交通事故について、逸失利益等の判断がされた事例
- 東京地判平成18・6・8(平成15年(ワ)第29850号、職務発明等に対する相当対価等請求事件)
三菱電機職務発明事件。「外国の特許を受ける権利の承継の効力発生要件や対抗要件等の法律関係については、これと最も密接な関係を有する各国特許法により規制されるべき事柄であるとしても、承継契約の成立及び効力発生要件等の法律関係については、これと最も密接な関係を有する使用者と従業者との契約の準拠法によるものと解すべきである。」とした。
+ 最判平成18・7・21(民集60巻6号2542頁、判時1954号27頁、判タ1228号119頁、金判1259号56頁)(2006-11 高桑)
外国国家の裁判権免除特権の制限と放棄
- 東京地判平成18・9・8(平成17年(ワ)第14399号、職務発明対価請求事件)
大塚製薬職務発明事件。「権利自体の承継の効力発生要件や対抗要件等の法律関係については,対象である特許権と密接に関連する問題であるから,その特許を受ける権利についても,各国の特許法令の規律を受けるものと考えられる。これに対し,承継に関する合意の成立,効力,対価請求の有無等の法律関係については,合意(契約)の準拠法に従うこととなり,法例7条によって決定される準拠法の規律を受けるものと解するのが相当である。」とした。
- 東京高決平成18・9・29(判時1957号20頁)
抗告人ら夫妻が子らの法律上の親であることを認めるネバダ州の裁判所の命令が確定している場合において,同命令が抗告人らと子らには血縁関係があること等を参酌してなされたものであることや,子の福祉等を考慮し,同確定裁判を承認しても公序良俗に反しないとして一審(東京家審平成17・11・30家月59巻7号105頁)を取り消したもの。
+ 最判平成18・10・3(民集60巻8号2647頁、判時1954号34頁、判タ1228号114頁)(2007-06 多田)
アメリカ合衆国アリゾナ州地区連邦地法裁判所から日本の裁判所に嘱託された証人尋問において証言拒絶権が認められた事例
+ 最判平成18・10・17(民集60巻8号2853頁、判時1951号35頁、判タ1225号190頁、労判925号5頁)(2007-01 高杉)
外国の特許を受ける権利の譲渡の対価に関する問題の準拠法は,法例7条1項の規定により第1次的には当事者の意思に従って定められるとし、従業者等が平成16年改正前特許法35条にいう職務発明に係る外国の特許を受ける権利を使用者等に譲渡した場合における対価請求については,同条3項及び4項の規定が類推適用されるとした事例。

民集59/6-10, 60/1-3

判時1910-1940

判タ1194-1218

家月58/1-10

金法1759-1785

金判1231-1251

労判903-920

訟月52/1-8