平成17年度重要判例解説用資料

(冒頭の + は渉外判例研究会で報告済み又は報告予定の裁判であることを示す。)

平成16年(その2)

+ 大阪地判平成16・2・5(LEX/DB 28090764)(2006-03 神前)
日本の会社から、同社のオーストラリア子会社の元役員(同国在住)に対する、損害賠償請求。原告は、被告が別の会社に転職予定であることを秘匿し、原告の営業秘密を不正に取得して転職先の会社に開示したなどと主張したが、裁判所は客観的事実関係についての証明がないなどとして、訴えを却下した。
- 東京地判平成16・4・9(判タ1177号294頁)
海上運送契約における荷送人の特定及び競売権不行使による権利喪失。
- 東京地判平成16・4・26(判時1877号95頁)
海上運送契約において、運送人の現地代理人の従業員が船荷証券と引き換えではなく運送品を第三者に引き渡したとして、運送品の売主兼運送契約の当事者である者と、船荷証券上の荷送人とが運送人に損害賠償を請求した事例。判決は、船荷証券の裏面約款による免責を認め、運送人への請求を棄却した。
- 大阪地判平成16・4・27(判時1882号116頁)
東京高判平成13・5・30と同一事案。著作権法上の問題、及び、前訴との訴訟物の同一性、訴訟上の信義則といった民訴法上の問題が主たる争点である。
- 福岡高判平成16・5・24(判時1875号62頁)
第二次世界大戦中に日本に強制連行され鉱山等で強制労働させられた中国人から国および使用した会社に対する損害賠償請求事件。福岡地判平成14・4・26の控訴審判決。会社の責任を一部認めた一審判決を破棄し、原告を全面的に敗訴させた。日本民法の適用を前提に、債務者に消滅時効の援用を容認することが、社会的相当性を欠き、一般的に許容し難いと解されるような特段の事情はないとした。
- 名古屋地判平成16・5・27(LEX/DB 28092234)
名古屋空港近くでの航空機墜落事故における死亡した乗客の遺族から航空会社及び航空機製造会社に対する訴えについて、わが国の国際裁判管轄を認め、航空会社に対する請求を一部認容したもの。
+ 東京地判平成16・10・14(判時1901号77頁)(2006-01 伊藤敬也)
上陸を禁止された外国人が、送還されるまでの間に警備会社の職員により警備料を支払わされたことについて、暴行等があったとして、当該警備会社、外国の国営航空会社および国に対して損害賠償を請求した事件。外国国営航空会社について、その主権的行為が問題とされているわけではないとして、主権免除を否定した。
+ 東京地判平成16・10・25(判タ1185号310頁)(2006-01 山田恒久)
日本法人に対する金員貸付を同法人のグループ会社である外国法人が連帯保証したとして、貸金返還請求訴訟と併合提起された連帯保証債務履行請求訴訟について、当該保証行為を行ったとの客観的事実が証明されたとはいえないとして訴えを却下した事例
- 大阪地判平成16・11・30(判時1902号140頁)
外国の商標権者と国内の商標権者との関係から、並行輸入について「外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同旨し得るような関係がある」とはいえないとされた事例。
- 東京高判平成16・12・25(金法1751号47頁)(2006-09 竹下)
海上運送契約の適用法と船荷証券の裏面約款の解釈

平成17年(その1)

+ 東京地(中間)判平成17・2・9(判時1927号75頁)(2006-03 宮澤愛子)
仲裁人選定の前提要件として仲裁合意の存否を判断した事例。
- 東京高判平成17・3・31(判例集未登載)
原告Xが、被告Yに対し、カナダに置かれたサーバーを利用しての電子ファイル交換サービスによって著作権が侵害されたとして損害賠償を請求した事案について、条理(差止請求の関係)ないし法例11条1項(不法行為の関係)により,日本法が適用されるものとしたもの。
- 東京地判平成17・4・13(判時1890号27頁、判タ1175号106頁)
国籍法3条1項は、父母が法律上の婚姻関係を成立させた子と、内縁関係にとどまる子との間に不合理な区別を生じさせている点において憲法14条1項に違反するとし、内縁関係にある日本人男性と外国人女性との間に生まれ、日本人男性から生後認知をされた原告は国籍取得届により日本国籍を取得したと判断した裁判例。
- 東京高判平成17・6・23(判時1904号83頁、訟月52巻2号445頁)
太平洋戦争中に中国から日本へ強制連行されて強制労働に従事させられ、逃走して約13年間逃走生活を余儀なくされた中国人の遺族から国に対する損害賠償請求(否定)。国際私法に関する判示はない。
+ 東京地(中間)判平成17・9・29(判時1907号152頁、労判904号35頁)(2006-01高杉)
米国ジョージア州港湾局の日本代表部職員の解雇無効確認等請求について、正面から「制限免除主義」を採用したもの。
+ 東京簡決平成17・10・20(LEX/DB 28102368)(2007-06 横溝)
船荷証券について公示催告の上除権決定を求める申立に関して、義務履行地がわが国にないことを理由に国際裁判管轄を否定して訴えを却下したもの。

民集58/5-9, 59/1-5

判時1874-1909

判タ1164-1193

家月57/1-12

金法1727-

金判1207-1230

労判881-902

訟月51/1-12