平成15年度重要判例解説用資料

(冒頭の + は渉外判例研究会で報告済み又は報告予定の裁判であることを示す。)

平成13年(その3)

- 東京地判平成13・7・12(訟月49巻10号2815頁)
いわゆる中国人強制連行・強制労働損害賠償請求事件。法例11条の適用を否定。
- 東京地判平成13・6・26(判タ1124号167頁)
入管収容施設の責任、国賠法6条についてイランとの相互の保証肯定。

平成14年(その2)

- 東京高判平成14・3・28(訟月49巻12号3041頁)
強制徴兵徴用者等に対する補償等請求。国の不法行為責任否定。法例には触れず。
+ 東京地判平成14・3・29(判時1804号50頁)(2003-11-15伊藤)
いわゆる従軍慰安婦から国に対する国家賠償請求を棄却した事例。国の公権力の行使を原因とする国の損害賠償責任の問題は、法例の対象とはならないとした。
+ 名古屋高判平成14・5・22(2003-11-15小川)
アメリカ合衆国裁判所の「理由開示命令手続における合意及び命令」に基づく執行判決請求について、当該合意および命令は執行判決の対象となる外国裁判所の判決には当たらないとしたもの。
+ 神戸地判平成14・5・28(2003-06-21織田)
医療過誤に基づく損害賠償請求。北朝鮮法と大韓民国法のいずれを被相続人の本国法とすべきかについて、法例28条3項を類推適用し、当事者がいずれの法秩序とより密接な関係があるかを考慮して定めるべきであるとした。
- 大阪高判平成14・6・14(判時1816号30頁)
外国税額控除・法人税法69条1項不適用。
- 東京地判平成14・6・28(訟月49巻11号3015頁)
旧日本軍兵士による加害行為を理由とする損害賠償請求。法例11条の適用否定。
- 東京地判平成14・6・28(判時1809号46頁)
米国との間で国賠法6条の相互の保証を認めた事例。
- 東京高判平成14・7・2(労判836号114頁)(原審=東京地判13・12・21労判836号119頁)
コンチネンタル・ミクロネシア・インク事件。原告は、被告である外国航空会社が期間満了を理由に雇用関係を終了されたのは権利の濫用であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認と賃金の支払いを求めたが、請求棄却。
+ 広島地判平成14・7・9(判タ1110号253頁)(2005-09-10 中西)
西松建設中国人強制連行事件
- 大阪高決平成14・8・7(家月55巻1号94頁)
旧国籍法(明治32年法律第66号)3条の「父カ知レサル場合」とは、子と血縁上の父との間の法律上の親子関係が成立していない場合を含むとして抗告人が出生時に日本人母の子として日本国籍を取得したことを肯定し、改正前法例18条の規定する配分的適用の原則の下では認知は成立していないとして、抗告人の就籍を許可した。
- 最判平成14・10・17(民集56巻8号1823頁、判時1806号25頁、判タ1109号113頁)
日本人の配偶者ではあるが、その婚姻関係が夫婦としての共同生活の実体を欠き、その回復の見込みが全くない状態に至っている場合について、その者の在留期間の更新申請を不許可とした処分の取り消しを認めなかったもの。
- 東京高判平成14・12・24(判時1816号128頁)
フレッドペリー東京高裁判決。並行輸入をした者からの損害賠償請求を棄却。
+ 東京高判平成14・12・25(判時1817号81頁)(2005-11-19 袁藝)
死亡した中国人から認知された日本人の子が、認知無効判決が確定後に、検察官を被告として当該中国人との間に養親子関係があることの確認を求めたが、認められなかった事例。実質的成立要件については平成元年改正前法例19条1項により配分的適用を行い、方式については同8条1項及び19条2項を適用した。

平成15年(その1)

- 京都地判平成15・1・15(判時1822号83頁)
強制連行された中国人から国および鉱山経営会社に対する請求。時効消滅。
- 仙台地判平成15・2・25(平成13年(ワ)第310号損害賠償請求事件)
KLMによる手荷物の延着。ワルソー条約の適用、約款の解釈、契約準拠法の決定。
- 最判平成15・2・27(民集57巻2号125頁、判時1817号33頁、判タ1117号216頁、金判1185号35頁)
フレッドペリー事件最高裁判決。並行輸入が商標権侵害にあたるとして損害賠償請求が認められた。
- 東京地判平成15・3・11
国及び企業に対する強制連行・強制労働を理由とする損害賠償請求をいずれも棄却。
- 最決平成15・3・18(判時1830号150頁、判タ1127号121頁)
別居中の妻が監護養育していた子を母国に連れ去る目的での国外移送略取罪成立。
+ 東京家審平成15・3・25(未登載)(2004-03-27大村)
パキスタン人未成年者の養子縁組
- 東京地判平成15・4・24(判時1823号61頁、判タ1127号281頁)
戦争中の性暴力被害者から国への損賠。請求棄却。準拠法も。
- 東京地判平成15・5・15(平成15年度重判)
旧日本軍が放置した毒ガス兵器等による被害の損害賠償について法例11条の適用を否定。
+ 東京高判平成15・5・28(判時1831号135頁)(平成15年度重判)(2004-03-27岩本)
スペイン法、著作権の信託契約
+ 最判平成15・6・12(判時1833号37頁、判タ1131号103頁、家月56巻1号107頁)(平成15年度重判)(2005-03-19 大村)
韓国人母の非嫡出子。日本人父から出生後に認知。日本国籍認める。
- 東京地判平成15・6・30(判時1831号149頁、判タ1146号260頁)
ボディグローヴ並行輸入事件。商標権。
- 東京地判平成15・9・29
旧日本軍が日中戦争中に中国に持ち込んだ毒ガス兵器等による1974年,1982年,1995年の事故の被害者が日本国に対して損害賠償請求。国賠法に基づいて請求認容。法例には触れず。
+ 東京地判平成15・10・16(判時1874号23頁、判タ1151号109頁)(2004-09藤澤(関西))
米国内における原告製品の販売行為についての米国特許権に基づく差止請求権の不存在確認請求等が問題となった。判旨は、国際裁判管轄および確認の利益を肯定した後、最判平成14・9・26(民集56巻7号1551頁)に従い、米国特許権に基づく差止請求を特許権の効力と性質決定して条理により米国特許法を準拠法とした。そして、原告製品は本件米国特許発明の技術的範囲に属しないとして、原告による差止請求権不存在確認請求を認容した。
+ 名古屋地判平成15・12・26(判時1854号63頁)(平成15年度重判)(2005-06-18 増田)
名古屋空港近くで航空機が墜落したことに基づく被害者およびその遺族から航空会社および航空機製造メーカーに対して損害賠償が請求された事件について、国際裁判管轄を認めた上で、航空会社への請求をほぼ認容し、航空機製造メーカーへの請求を棄却した。判旨が触れている問題点は多岐にわたるが、ヘーグ議定書による改正ワルソー条約25条についていわゆる主観説を採用し、詳細な事実認定に基づいて、航空会社に損害全額の賠償を命じた点が特に注目されよう。

最判56/5-57/4

家月54/12-55/12

訟月49/1-12

判時1804-1836

判タ1109-1133

金判1149-1180

金法1652-1694

労判829-857